10月になりましたが、まだ台風シーズンは終わりを迎えていません。
沖縄近海で台風が発生し、それが短期間で大型で強力な台風に成長することを何度も経験していますし、油断はできません。
これは沖縄だけの話ではなく、世界各地で同様の現象が見られています。
熱帯低気圧、つまり台風やハリケーンが急速に強化されるケースが増えていると感じませんか?
特に「急速強化(Rapid Intensification:RI)」と呼ばれる、わずか24時間で風速が30ノット(約55.6 km/h)以上も増加する現象が頻発しています。
この急速強化は一度で終わらず、複数回発生するケース、いわゆる「multiple-RI」が増加しているのです。
過去40年間のデータを比較してみると、1981年から2000年に対し、2001年から2020年の期間では「multiple-RI」の頻度が82.43%も増加していることが判明しました。
一方、急速強化が一度だけ起こるケースの増加はわずか1.63%にとどまっています。
これから、現在の熱帯低気圧が、以前よりも何度も急速に強化される傾向にあることが明確に分かります。
このような変化が起きている原因の一つは、海面水温の上昇です。
地球温暖化によって海の表面温度が上がることで、熱帯低気圧が持つエネルギー源である海水からの蒸発が促進されます。
その結果、熱帯低気圧の最大可能強度(Maximum Potential Intensity:MPI)が上昇し、特に「カテゴリー1〜3」の段階で急速強化が起こりやすくなっているのです。
この段階では、まだ最大強度に達していないため、熱帯低気圧はさらに強化される条件が整い、再び急速に強化されやすくなります。
この状況を視覚的に理解するために、以下の図を参照してください。

この図は、急速強化(RI)がどの段階で発生しやすくなっているかを示しています。
特に、2001年から2020年の期間では、従来のTS(Tropical Storm)段階に加えて、カテゴリー1〜3(Cat-1, Cat-2, Cat-3)の段階でも急速強化の頻度が増加していることが分かります。
これは、気候変動による海面温度の上昇がどのように影響しているかを示すものです。
これによって、熱帯低気圧の強度が上がり、被害がより深刻になる可能性が高まっています。
たとえば、急速に強化された熱帯低気圧は予測が難しく、沿岸地域への警戒や避難が間に合わないことが多くあります。
実際、報告されたデータによると、複数回急速強化を経験した熱帯低気圧の最終的な最大強度は、一度だけ急速強化を経験した場合よりも平均で20ノット(約37 km/h)高いことが確認されています。
この変化は、今後の気候変動がもたらす影響を考える上で非常に重要です。
地球温暖化が進行することで、海面温度の上昇は避けられず、熱帯低気圧がさらに強力になる可能性があります。
そのため、この現象についてより深く理解し、適切に備えることが必要です。
予測精度の向上により、被害を最小限に抑えるための対策も求められています。
参考文献:
Manikanta ND, Joseph S, Naidu CV. Recent global increase in multiple rapid intensification of tropical cyclones. Sci Rep. 2023;13(1):15949. Published 2023 Sep 24. doi:10.1038/s41598-023-43290-9
