外来で患者さんに「定期的に運動しているか?」と尋ねると、「犬を散歩させている」と答える方が何人かいらっしゃいます。
この犬の散歩が本当に十分な運動になるのか、疑問に感じる方もいるかもしれません。
しかし、今日ご紹介する論文は、まさにその疑問に対する答えを提示してくれるものです。
健康を維持するためにどの程度の運動が必要かというと、世界保健機関(WHO)などが推奨するガイドラインでは「週150分の中程度の運動」とされています。
これが成人にとって健康を保つための基準となるのです。
イギリスのウェストチェシャーで行われた調査によれば、犬を飼っている人は飼っていない人に比べ、週に150分以上の身体活動を行う可能性が4倍高いという結果が出ています。
この調査は、191名の犬の飼い主と455名の犬を飼っていない成人、さらに46人の子供たちを対象に行われました。
犬の飼い主たちは週に平均220分も犬と一緒に散歩をしており、この活動が彼らの健康に大きな影響を与えていることがわかりました。
「犬との散歩」という日常的な行動は、単なる運動以上の意味を持つことが見えてきます。
犬の飼い主の中で、64%が犬の散歩だけで週150分以上の身体活動を達成しており、その結果、彼らの健康状態は改善されています。
特に、楽しみのためのレクリエーションとしての歩行が多くの身体活動を支えており、犬を飼うことが自然に活動量を増やすきっかけになっているのです。
また、犬を飼っている家庭の子供たちも、歩行や自由な遊びの時間が増えていることが報告されています。
犬を連れての散歩は家族全体のアクティビティとなり、子供たちも自然と運動量が増えるというわけです。
このように、犬との生活は家族全体にとって健康に良い影響をもたらす可能性があります。
もちろん、犬を飼うことには多くの責任が伴います。
しかし、犬の存在が私たちの健康を自然に支えてくれるという事実は非常に興味深いものです。
犬を飼うことで、強制的に外に出る機会が増え、その結果、より活動的な生活を送ることができるのです。
自治体や政策としても、犬を飼いやすい環境を整備することが、地域全体の健康促進につながるかもしれません。
もし犬を飼うことを検討しているなら、そのメリットは健康面においても大きいと言えるでしょう。
ただし、犬を飼う理由は自分の健康のためだけでなく、犬の幸せも十分に考慮して決めること。
それが何よりも重要です。
参考文献:
Westgarth C, Christley RM, Jewell C, German AJ, Boddy LM, Christian HE. Dog owners are more likely to meet physical activity guidelines than people without a dog: An investigation of the association between dog ownership and physical activity levels in a UK community. Sci Rep. 2019;9(1):5704. Published 2019 Apr 18. doi:10.1038/s41598-019-41254-6
