パリオリンピックで新たに採用されたブレイキンを見たとき、ダンスの凄まじさに驚かされ、素直に感動しました。
彼らの身体から溢れ出すエネルギーと躍動感あるパフォーマンスに、視線を奪われたことを今でも鮮明に覚えています。
ダンサーには、他の何者にも代えがたい特別な魅力があると感じます。
実際、ドイツとスウェーデンで実施された大規模な調査でも、ダンサーと一般の人々との間には興味深い性格の違いが確認されています。
今回は、この調査で明らかになったダンサーの性格特性について、科学的な視点からのアプローチとなります。
スウェーデンの5435人、ドイツの574人を対象にした研究では、ダンサーと非ダンサーの性格を「ビッグファイブ」と呼ばれる5つの特性(開放性、外向性、協調性、神経質、誠実性)を用いて比較しました。
この結果を視覚的に理解するために、以下の図を参照してください。
図はスウェーデンとドイツのダンス参加グループにおけるビッグファイブの性格特性を示しています((A)はスウェーデンのデータ、(B)はドイツのデータです)。
【記号の説明 A:協調性、C:誠実性、E:外向性、N:神経質、O:開放性】

特に、パフォーマンスダンサーやプロのダンサーがO:開放性やE:外向性の面で高いスコアを示す一方で、N:神経質のスコアが低いことが確認できます。
「開放性が高い」という特性は、新しい経験を楽しみ、クリエイティブな活動に積極的であることを示します。
ダンスは身体の動きや音楽との調和が不可欠なため、これらの性格特性が重要な役割を果たしていると考えられます。
また、外向的であることで、人前でのパフォーマンスに対する抵抗感が少なく、むしろその場を楽しむ傾向が見られるのも特徴です。
さらに、ダンスのスタイルごとに異なる性格特性があることも分かりました。
例えば、バレエやアルゼンチンタンゴを踊る人々は、標準的なダンスやラテンダンスを踊る人々に比べて、開放性が高い傾向が見られました。
一方で、スイングダンスのダンサーは他のスタイルのダンサーよりも感情の安定性が高いという特徴が示されています。
この差は、おそらくスイングダンスの持つ楽しげなリズムと陽気な雰囲気が、よりリラックスした性格を引き出していることに関連しているのでしょう。
また、興味深いことに、ダンサーとミュージシャンの間でも性格に違いがあることが確認されました。
ダンサーはミュージシャンと比べて感情の安定性が高い傾向にあり、これはダンスが身体を使った直接的な表現であることと深く関連していると考えられます。
身体を通して感情を表現するダンサーにとって、神経質であることはパフォーマンスに対する障害になりうるため、感情の安定性はむしろ有利であると言えます。
この研究結果から、ダンサーは一般的に開放性が高く、外向的で協調性が高く、神経質が低いという性格特性を持つことが示されました。
これらの特性は、ダンスという芸術表現を通して育まれるだけでなく、もともとこうした性格傾向を持つ人々がダンスに引き寄せられている可能性もあります。
ダンスを通して得られる自己表現の自由さや他者とのつながりが、ダンサーたちの心を豊かにしているのでしょう。
参考文献:
Julia F. Christensen, Laura W. Wesseldijk, Miriam A. Mosing, Kirill Fayn, Eva-Madeleine Schmidt, Matthias Blattmann, Luisa Sancho-Escanero, Fredrik Ullén, The dancer personality: Comparing dancers and non-dancers in Germany and Sweden, Personality and Individual Differences, Volume 222, 2024, 112603, ISSN 0191-8869, https://doi.org/10.1016/j.paid.2024.112603.
