慢性腎臓病(CKD)とグリコアルブミン

慢性腎臓病(CKD)とグリコアルブミン

 

慢性腎臓病(CKD)患者にとって、糖尿病管理は非常に重要です。

特に糖尿病を併発している場合、血糖コントロールの指標として一般的に「HbA1c」が使用されますが、CKDが進行すると、この指標の信頼性が低下することが知られています。

なぜなら、CKDでは貧血が起きやすく、赤血球の寿命が短縮されてしまうため、HbA1cが実際の血糖値を正確に反映できなくなるのです。

加えて、鉄剤やエリスロポエチンの使用もこの数値に影響を与えるため、CKD患者ではこの指標のみに頼ることが難しい状況が生じます。

 

その一方で、赤血球の寿命に影響されず、より短期間(約2〜3週間)の血糖状態を示す指標として、グリコアルブミン(GA)があります。

特に、透析ガイドラインにおいては、透析を行っている糖尿病患者では、代わりにグリコアルブミンでの血糖管理が推奨されています

 

最近の研究では、透析療法を必要としないレベルのCKDステージ3〜5に該当する3,110人の患者を対象に、グリコアルブミンと臨床的なリスクとの関連が調査されました。

平均推算糸球体濾過量(eGFR)は41.9 mL/min/1.73 m²で、CKDステージ3の患者が58.5%、ステージ4または5が26.3%を占めています。

 

この研究では、GAが高いほど、末期腎不全(ESKD)、心血管疾患(CVD)、全死亡率のリスクが増加することが確認されました。

例えば、GAが最も高いグループでは、ESKDリスクが1.42倍、CVDリスクが1.67倍、死亡リスクが1.63倍に上りました。

興味深いことに、GAが低すぎる場合でもリスクが増加し、J字型のリスク曲線が観察されました。

 

 

糖尿病を併発するCKD患者においては、HbA1cとグリコアルブミンを併用することで、予後の予測精度が向上することが明らかになっています。

特に心血管疾患のリスク予測は8%も向上したとの結果が得られました。

 

ただし、現在の日本の保険診療では、HbA1cとグリコアルブミンの併算定は原則不可となっています。

そのため、現場では一方の指標を選択しなければならないという制約があります。

しかし、将来的なガイドラインの改訂や研究の進展に伴い、変わる可能性もあるでしょう。

 

この研究は、特にCKDステージ3〜5の透析を必要としない患者において、グリコアルブミンが非常に有効な指標であることを示しています。

今後はさらに多くの患者にとって、この指標が重要な役割を果たすかも知れません。

  

参考文献:

Tang M, Berg AH, Zheng H, et al. Glycated Albumin and Adverse Clinical Outcomes in Patients With CKD: A Prospective Cohort Study. Am J Kidney Dis. 2024;84(3):329-338. doi:10.1053/j.ajkd.2024.02.006