集中治療室(ICU)の看護師たちが直面する負荷は非常に多岐にわたります。
そして、過酷な環境で働く看護師たちの負担をどのように軽減できるのかが、医療現場における重要な課題の一つです。
最新の研究では、スイスのICUで働く看護師60名のシフトごとの「主観的負荷」と「客観的負荷」の両面から、その関係性を探りました。
まず、「主観的負荷」とは、看護師たちが自分の仕事をどれだけ「重い」と感じるかを指します。
精神的負担、仕事のスピードと量、身体的な負荷、さらには感情や倫理に関する負荷までを、質問票を使って詳細に評価しました。
一方で、「客観的負荷」は、治療やケアの実際の作業量、担当患者数、看護師の配置人数といった具体的なデータから計測されます。
この研究では、看護師たちが感じる負荷の強さにかなりのばらつきがあることが明らかになりました。
例えば、看護師たちが感じた精神的な負荷の平均は66点と高めでしたが、感情的・倫理的な負荷は26点と低めのスコアでした。
身体的な負荷についても33点とされており、そこまで高い数字ではないことがわかります。
しかし、興味深いのは、こうした「主観的な負荷」が、実際の仕事量、つまり「客観的な負荷」と必ずしも一致しないという点です。
具体的な数値で見ると、TISS-28という指標では43点、NEMSという別の指標では36点が算出され、看護師1人が担当する患者数の平均は1.2人でした。
これらのデータから、看護師たちが抱える負担は決して過剰ではないように見えるのですが、精神的なストレスが大きく影響していることが浮き彫りになりました。
この研究が示すのは、主観と客観の間に明らかなズレがあることです。
たとえば、仕事のペースや量に関しては、客観的な負荷と関連性が見られましたが、感情や倫理に関する負荷には関連が見られませんでした。
つまり、数字で測れる部分だけではなく、看護師自身がどのようにその仕事を感じ取っているかが、負担の本質を理解するうえで重要だということです。
研究者たちは、この結果を踏まえて、ICUの管理者が看護師の主観的な負荷にもっと目を向けるべきだと提言しています。
特に、精神的な負担が非常に高いことが判明しているため、これを軽減するための具体的な対策が必要です。
実際の仕事量が適正であっても、看護師たちがストレスや精神的な疲労を感じ続ける環境では、長期的に働き続けることは難しいでしょう。
参考文献:
Fischbacher, S., Exl, M.T., Simon, M. et al. A prospective longitudinal cohort study of the association between nurses’ subjective and objective workload. Sci Rep 14, 22694 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-73637-9
