「ああ、面倒くさい。大事なことはたいてい面倒くさい」と嘆いていたのは、あの宮崎駿監督でした。
私たちが難しい問題に取り組む際、しばしば「しんどさ」を感じます。
これは単なる主観的な感覚かと思いがちですが、実際には科学的にも証明されつつあります。
最新の研究によれば、「考えることはしんどい」という感覚には、明確な裏付けがあるようです。
この研究は、過去125件の研究を対象に、4,670人以上のデータをメタ分析によってまとめたものです。
NASA Task Load Index(NASA-TLX)という自己報告型の指標を用いて、参加者がどの程度の精神的な努力を必要としたか、またその結果としてどれだけのフラストレーションや不快感を感じたかを測定しました。
特に興味深い点は、タスクの内容が多岐にわたっていたことです。
例えば、コンピュータを使った課題から、現実的なシミュレーションまで。
いずれのタスクでも、精神的な努力を要する場合、フラストレーションや苛立ちが強まる傾向が確認されました。
実際、精神的負荷が高まると、それに比例してネガティブな感情が強まるという結果が得られたのです。
さらに地域によって異なる反応も見られました。
アジアの参加者は、欧米の参加者に比べ、精神的な努力に対してやや少ない不快感を示す傾向がありました。
文化的背景や教育システムの違いが影響している可能性が考えられますが、詳細な原因は今後の調査に委ねられています。
この研究は「労力軽減の法則」とも関連しています。
この法則は、人間ができるだけ少ない努力で目標を達成しようとする本能的な傾向を示したもので、困難な課題に直面したときに「より簡単な道を選びたい」と感じるのは、脳がエネルギーを節約しようとしている証拠といえます。
研究の要点
– 精神的努力は、多くの場合、不快感を伴う。
– タスクの種類や条件に関係なく、努力とストレスの関係は強い。
– 地域差があり、アジアの参加者は欧米よりも精神的努力を不快と感じにくい。
– 負荷が高いタスクほど、ネガティブな感情が強まる傾向が見られる。
私たちが日常で感じる「面倒くささ」は、実は自然な反応なのかもしれません。
そして、この知識を持つことで、次に困難なタスクに直面したとき、少しでも心構えが変わるかもしれませんね。
参考文献:
David L, Vassena E, Bijleveld E. The Unpleasantness of Thinking: A Meta-Analytic Review of the Association Between Mental Effort and Negative Affect. Psychol Bull. 2024;150(9):1070-1093. doi:10.1037/bul0000443
