COVID-19にかかった後、嗅覚が一時的に失われることがあります。
この症状は多くの人が経験していて、多くの場合、時間とともに自然に回復します。
しかし、最近の研究では、嗅覚の変化が脳に一時的な影響を与えることがあることもわかってきました。
これが必ずしも深刻なものとは限りませんが、回復の過程で知っておくと役立つ情報です。
この研究では、COVID-19に感染した73名と他の感染症患者27名を対象に、認知機能のテストや脳のスキャンを行い、嗅覚の変化が脳にどのように影響するかを調査しました。
嗅覚を失った患者は、意思決定において少し衝動的になる傾向が見られ、脳の特定の領域で活動が低下することが確認されました。
また、頭頂部の皮質がわずかに薄くなるという構造的な変化も観察されました。
しかし、こうした変化が長期的な健康問題に直結するかどうかは、今のところ明確にはなっていません。
一方、COVID-19で入院を必要とした患者の場合、意思決定が慎重になりすぎるという行動パターンが見られました。
これもまた、脳の一時的な反応の一つと考えられています。
興味深いことに、嗅覚を失った患者の脳には白質(脳の神経線維)の変化も見られましたが、これがどれほど長く続くのか、あるいは完全に回復するのかは、まだ結論が出ていません。
この研究は、嗅覚の喪失が脳に一時的な影響を与える可能性があることを示していますが、ほとんどの人が時間の経過とともに回復しています。
特に、COVID-19からの回復過程にある方にとって、このような脳の変化が一時的なものであることが多く、過度に心配する必要はないでしょう。
嗅覚や脳に変化を感じた場合は、必要に応じて専門家に相談しながら、身体が自然に回復していくのを見守ることが大切です。
日常生活で嗅覚の変化を感じることがあっても、それは体が回復に向かう過程の一部であるかもしれません。
この研究は、そうした変化を理解するための新たな一歩を提供しており、今後さらに多くの知見が得られることが期待されています。
参考文献:
Kausel, L., Figueroa-Vargas, A., Zamorano, F. et al. Patients recovering from COVID-19 who presented with anosmia during their acute episode have behavioral, functional, and structural brain alterations. Sci Rep 14, 19049 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-69772-y
