血液透析(HD)と血液濾過透析(HDF)の比較

 

透析治療を受ける患者にとって、血液透析(HD)血液濾過透析(HDF)は、どちらがより効果的なのでしょうか?

この疑問は、長年にわたり医療現場で議論されてきました。

 

まず、血液透析(HD)とは、腎臓の機能が低下した患者の体内から、余分な水分や老廃物を除去する治療法です。

具体的には、血液を体外に取り出し、専用のフィルターを通して、不要なものを取り除きます。

そして、きれいになった血液を再び体内に戻すという流れです。

 

一方、血液濾過透析(HDF)は、HDにさらに一歩進んだ方法です。

基本的な流れはHDと似ていますが、HDFでは、フィルターで血液をろ過するだけでなく、清潔な補液を用いて、より多くの老廃物を効率的に取り除くことができます。

特に、HDでは取り除きにくい中くらいのサイズの老廃物に対して、HDFは非常に効果的です。

 

次に、両者の主な違いについてですが、 

HDは主に小さな老廃物をフィルターで除去します。 

HDFは、より多くの老廃物を取り除くために「対流」というメカニズムを利用し、体内をより徹底的に洗浄します。

 

要するに、HDFは「より強力な洗浄」を行う方法であり、HDに比べて広範囲の老廃物を取り除くことが可能です。

では、HDFの方が良いのか?

一見そのように思えますが、実際にはどちらが患者にとってより有益かは、これまで明確ではありませんでした。

 

しかし、最近の研究で、その違いがはっきりとしてきました。 

この研究では、末期腎不全(ESKD)の患者4,143人を対象に、HDFとHDの効果を無作為化比較試験(RCT)を通して比較しました。

その結果、HDFを受けた患者は、全体の死亡率が20%も低かったのです(リスク比[RR] 0.81)。

 

さらに、心血管疾患による死亡リスクについても、HDFはHDに比べて25%の低下を見せていました(RR 0.75)。

 

もう一つ注目すべきは、感染症による死亡リスクです。

HDFはこのリスクも31%減少させており(RR 0.69)、透析を受ける患者にとって大きな脅威となる感染症からも、HDFが患者を保護する力があることが示されています。

 

一方、腎移植に関しては、HDFを受けた患者の方が若干高い結果となりましたが、これは統計的に有意ではありませんでした。

したがって、移植率には大きな違いはないと言えます。

 

このように、HDFは単なる血液浄化の手段に留まらず、患者の生存率を向上させる有力な治療法であることが、今回の研究で明確になりました。

透析を必要とする患者にとって、生存率を高める選択肢が増えることは、非常に重要な意義を持っています。

 

まとめ:HDFの効果

全死亡率:HDFは20%低減

心血管死亡率:HDFは25%低減

感染関連死亡率:HDFは31%低減

腎移植率:有意差なし

 

今後の研究では、HDFの長期的なメリットやコストに関する分析が進められることが期待されます。

現時点では、HDFが患者の生存率を向上させる可能性が非常に高いという結論に至っています。

 

参考文献:

Guimarães MGM, Tapioca FPM, Dos Santos NR, Tourinho Ferreira FPDC, Santana Passos LC, Rocha PN. Hemodiafiltration versus Hemodialysis in End-Stage Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis [published correction appears in Kidney Med. 2024 Jul 11;6(8):100869. doi: 10.1016/j.xkme.2024.100869]. Kidney Med. 2024;6(6):100829. Published 2024 Apr 18. doi:10.1016/j.xkme.2024.100829