尿管結石を経験したことのある人は、その激しい痛みをよくご存じでしょう。
しかし、日常の運動が腎結石のリスクを減らす可能性があるとしたら?
最近の大規模な研究が、腎結石予防における運動の重要性を明らかにしました。
この研究は、イギリスのUK Biobankというプロジェクトの一環で、80,000人以上を対象に行われました。
参加者は1週間、腕時計型の加速度計を装着し、日々の運動量を正確に記録しました。
これにより、軽い運動(ウォーキングなど)や中強度から高強度の運動(ジョギングやランニングなど)が、腎結石リスクにどのような影響を与えるかが詳細に分析されました。
結果は非常に興味深いものでした。
運動量が多い人ほど、腎結石のリスクが大幅に低下することがわかったのです。
特に、総運動量が最も多いグループでは、リスクがなんと50%も低減しました。
さらに、中強度から高強度の運動をしている人は、リスクが約43%減少。
軽い運動だけでも34%のリスク低下が確認されています。
このグラフからもわかるように、総運動量(TPA)や中強度から高強度の運動(MVPA)、軽い運動(LPA)それぞれで、運動量が多いほど腎結石のリスクが低くなっています。
たとえば、TPAに関しては、最も運動量が多い第4四分位群では、最も少ない第1四分位群に比べ、腎結石の累積発症率が大幅に抑えられていることが確認できます。
– 総運動量(TPA): リスク50%減少(ハザード比 0.50)
– 中強度から高強度の運動(MVPA): リスク43%減少(ハザード比 0.57)
– 軽い運動(LPA): リスク34%減少(ハザード比 0.66)
これらのデータは、日常的に少しでも体を動かすことが、腎臓の健康に大きく寄与する可能性があることを示しています。
さらに、運動の効果は、遺伝的に腎結石になりやすい人にも及びました。
遺伝的にリスクが高い人でも、運動を習慣にすることでリスクが著しく低下することが確認されています。
特に、軽い運動だけでなく、もう少し強度の高い運動を取り入れることが、遺伝的リスクを上回る効果を発揮するようです。
腎結石は、腎臓に結晶がたまることで発生します。
このプロセスには、体内の炎症や酸化ストレスが関与していることがわかっています。
運動にはこれらの炎症や酸化ストレスを軽減する効果があるため、腎臓に石ができるのを防ぐと考えられています。
実際、適度な運動が体内の抗酸化作用を高めることも科学的に証明されています。
この研究が示しているのは、特別なトレーニングが必要ないということです。
ウォーキングのような軽い運動でも十分効果があります。
日常のちょっとした活動を増やすだけで、腎結石のリスクを減らすことができるということです。
腎結石のリスクが気になる方や、家族に腎結石の歴史がある方は、ぜひ毎日の生活に少しの運動を取り入れてみることをお勧めします。
「あの痛み」を予防できるのだったらと、思いませんか?
参考文献:
Liu Y, Ku PW, Li Z, et al. Intensity-Specific Physical Activity Measured by Accelerometer, Genetic Susceptibility, and the Risk of Kidney Stone Disease: Results From the UK Biobank. Am J Kidney Dis. 2024;84(4):437-446.e1. doi:10.1053/j.ajkd.2024.03.022