近年、スマートフォンやテクノロジーの発達により、私たちの働き方は大きく変わりました。
リモートワークが一挙に普及したのは、コロナ禍がきっかけとなったというのは間違いのないところです。
仕事のメールやメッセージがいつでもどこでも確認できるようになった一方で、仕事と私生活の境界が曖昧になってきています。
夕食後や就寝前に「緊急」のメールが届き、リラックスしていた気分が一気に崩れてしまう——そんな経験はありませんか?
KimとChon(2022年)の研究によると、就業時間外に業務連絡を行うことが従業員に与える影響が明らかになりました。
この研究では、アメリカの様々な業界で働くフルタイム従業員を対象に、就業時間外の業務連絡が感情的な消耗や職務行動にどのように影響するかを調査しました。
– 感情的消耗の増加:就業時間外に業務連絡を受け取ることで、従業員の感情的なエネルギーが消耗しやすくなることが示されました。
– 生産性の低下とネガティブな行動:感情的に消耗した従業員は、生産性が低下し、職場での不平不満や同僚への悪口といったネガティブな行動を取る傾向があることがわかりました。
仕事と私生活のバランスが崩れると、従業員の健康や幸福感に影響を与えるだけでなく、組織全体のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。
従業員が燃え尽きてしまうと、離職率の増加やチームの士気の低下につながる可能性があります。
では、私たちができることは何でしょうか。
– 明確な境界を設定する:企業は就業時間外の業務連絡を控えるポリシーを導入し、従業員の私生活を尊重する文化を築くことが重要です。
– テクノロジーの適切な活用:メールやメッセージの送信時間を予約する機能を利用し、必要以上の業務連絡を防ぐ工夫をしましょう。
– オープンなコミュニケーション:従業員が感じているストレスや悩みを共有できる環境を整えることが大切です。
テクノロジーの恩恵を最大限に活用しつつ、仕事と私生活のバランスを保つことは、私たち一人ひとりの健康と幸福に直結します。
参考文献:
Kim, K.H. and Chon, M.-G. (2022), “When work and life boundaries are blurred: the effect of after-hours work communication through communication technology on employee outcomes”, Journal of Communication Management, Vol. 26 No. 4, pp. 386-400. https://doi.org/10.1108/JCOM-06-2022-0073