腎機能が低下したときに行う治療は、大きく3つあげられます。
血液透析(HD)と腹膜透析(PD)、そして腎移植(KT)です。
そして、患者さんにとって、どの方法が自分に合っているのかを選ぶことは重要な決断です。
最近の研究によると、血液透析(HD)から腹膜透析(PD)に移行することのメリットが示されています。
では、腹膜透析に移行するタイミングが遅れても、その効果はあるのでしょうか?
調査によると、5,224人の患者を対象にした分析では、透析治療の始め方によって結果が大きく異なります。
最初からPDを選んだ患者(PD-first)は、治療の安定性が最も高く、PDを続けられる期間が中央値で18ヶ月という結果でした。
それに対して、HDから90日以内にPDへ移行した患者(PD-early)は、1.51倍のリスクで再びHDに戻る可能性がありました。
また、90日以降にPDへ移行した患者(PD-late)は、そのリスクが2.41倍に上がりました。
PD-lateの患者では、PD治療の中央値は13ヶ月と短くなってしまいました。
では、「遅すぎる」と感じるかもしれないPDへの移行に、果たしてメリットはあるのでしょうか?
専門家によれば、「遅くてもPDに移行する価値はある」とのことです。
たとえHDからの移行であっても、PDの利点である生活の質の向上や自立性を享受できる可能性があるからです。
また、感染症のリスクや他の合併症がある患者でも、状況に応じてPDが適切な選択肢になることがあります。
興味深いことに、研究では腹膜炎がPDからHDへの再移行の最大の原因とされ、特に最初の9ヶ月間に注意が必要であることがわかりました。
とはいえ、「PD first」が最善の選択肢である一方で、患者さんの個別のニーズに応じた「個別最適の治療法」を選ぶことが最も重要です。
医師とよく相談し、自分に合った透析治療の方法を選ぶことが大切です。
この研究は、透析治療の選択肢についてより柔軟な視点を提供するものです。
どのタイミングでも適切な移行が行われることで、患者さんがより良い生活を送ることができる可能性を示しています。
私たち医療者もこの結果を真摯に受け止めなければなりません。
参考文献:
Shah AD, Perl J. Transfers From In-Center Hemodialysis to Peritoneal Dialysis: Better Late Than Never? Am J Kidney Dis. 2024 Sep;84(3):269-271. doi: 10.1053/j.ajkd.2024.05.002. Epub 2024 Jun 20. PMID: 38904590.