腎臓の主なはたらきのひとつに「体の中に生じた老廃物を体外に排泄する」というのがあります。
腎機能が落ちてきて、老廃物が体の中に蓄積されると、疲労や食欲不振、かゆみ、吐き気、痛みといった「尿毒症状」が出現してきます。
意外に思われるかも知れませんが、どの物質が特に悪さをしているのか、はっきりわかっていませんでした。
つまり、「老廃物」や「尿毒症物質」という表現は、患者さんにわかりやすく説明しようとした例えなどではなく、解明していないからそう呼ばざるを得なかったのです。
今回の研究では、CKD患者の血液中にある代謝物(体の中で作られる化学物質)を詳しく調べることで、この謎に少しずつ光が当てられています。

研究では、1,761人のCKD患者の血液を分析し、448種類の代謝物を測定。その結果、26種類の代謝物が、尿毒症状と関係していることが明らかになりました。
具体的には、疲労、食欲不振、かゆみ、吐き気、感覚異常(手足のしびれなど)、痛みのいずれかの症状が強い患者さんの血液中に、これらの代謝物が多く含まれていることが確認されたのです。
例えば、食欲不振に関しては「N-アセチルアスパラギン酸」や「ジアセチルスペルミン」という代謝物が、また吐き気には「C-グリコシルトリプトファン」や「N-アセチルアスパラギン酸」が関与していることがわかりました。
さらに、かゆみに関しては「DMGV(ジメチルグアニジノバレリン酸)」が関係していることも明らかにされています。
特にかゆみは、多くのCKD患者さんが悩まされる症状です。
また、腎臓の働き(eGFR)との関連性も見逃せません。
尿毒症状が重い患者さんでは、eGFRが低い傾向があり、代謝物の数値とも中程度の相関が見られました。
特に腎機能が低下することで、体内に有害物質がたまりやすくなり、症状が悪化していく可能性があります。
今回の研究で特定された代謝物は、今後の治療法開発に役立つかもしれません。
尿毒症状を引き起こす物質を減らすことができれば、CKD患者さんの生活の質が向上する可能性があります。
ただし、まだ原因物質として確定するためには、さらなる検証が必要のようです。
これからの研究によって、CKD患者さんが少しでも快適な日常を送れる日が近づくことを期待したいですね。
参考文献:
Wulczyn KE, Shafi T, Anderson A, Rincon-Choles H, Clish CB, Denburg M, Feldman HI, He J, Hsu CY, Kelly T, Kimmel PL, Mehta R, Nelson RG, Ramachandran V, Ricardo A, Shah VO, Srivastava A, Xie D, Rhee EP, Kalim S; CRIC Study Investigators. Metabolites Associated With Uremic Symptoms in Patients With CKD: Findings From the Chronic Renal Insufficiency Cohort (CRIC) Study. Am J Kidney Dis. 2024 Jul;84(1):49-61.e1. doi: 10.1053/j.ajkd.2023.11.013. Epub 2024 Jan 23. PMID: 38266973; PMCID: PMC11193655.
