このブログでは、果物についての研究論文はあまり取り上げてこなかった気がします。
体に良さそうな果物も、食べ過ぎるのは良くない…という印象が強くて、目に留めなかっただけかも知れません。
最近の研究で、中年期に果物をたくさん食べることが、高齢期のうつ症状を減らすかもしれないという結果が発表されました。
シンガポールの中国系住民13,738人を対象にした長期的な調査によると、果物をしっかり摂る人ほど、高齢になってからのうつ症状が少ないことがわかりました。
この研究は、平均52.4歳の参加者に対して、果物や野菜の摂取状況を調べ、その後20年間にわたり追跡調査を行いました。
うつ症状は、老人用うつ病尺度(GDS-15)を用いて評価され、5点以上を「うつ症状あり」と定義。
その結果、追跡期間中に3,180人(全体の約23%)がうつ症状を報告しました。
しかし、果物を多く摂っていた人たちは、うつ症状のリスクが最大29%低かったのがわかりました。
具体的には、果物摂取量が最も多いグループでは、最も少ないグループと比べて、うつ症状の発生率がオッズ比0.71(95%信頼区間:0.63-0.81)と大幅に低下していました。
つまり、果物をよく食べる人はうつになりにくいという結果が得られたのです。
一方、野菜の摂取については、意外にも明確な関連は見られませんでした。
野菜をどれだけ食べても、うつ症状のリスクには有意な変化がなかったのでした。
では、どんな果物が特に良いのでしょうか?
この研究では、オレンジ、タンジェリン、バナナ、パパイヤ、スイカなどの果物が、うつ症状のリスクを下げるのに効果的である可能性が示されました。
これらの果物には、ビタミンCやカロテノイド、フラボノイドといった抗酸化物質が豊富に含まれており、これがうつ症状の予防に役立っていると考えられています。
一方で、「野菜も健康に良いのに、どうしてうつ症状には効果がないの?」という疑問もわいてくるかもしれませんね。
研究者たちは、野菜は主に調理して食べることが多く、調理過程で栄養素が変化してしまうため、果物ほどの効果が見られないのではないかと推測しています。
生の状態で食べることの多い果物とは異なり、野菜は加熱することで抗酸化物質が減少してしまう可能性があるわけです。
沖縄は果物が豊富ですから、こういう研究をアピールしてもいいかも知れませんね。
参考文献:
Li H, Sheng LT, Jin A, Pan A, Koh WP. Association between consumption of fruits and vegetables in midlife and depressive symptoms in late life: the Singapore Chinese Health Study. J Nutr Health Aging. 2024;28(6):100275. doi:10.1016/j.jnha.2024.100275