静脈内アミノ酸投与で術後の腎臓をまもる

 

心臓手術は体にとって大きな負担です。

その中でも特に心配されるのが「急性腎障害(AKI)」という合併症です。

これは、手術後に腎臓の機能が急激に低下する状態で、約30%の患者さんが経験するとされています。

AKIが発生すると、長期的な腎臓の健康に影響を与える可能性があり、場合によっては血液透析などの腎臓の治療が必要になることもあります。

 

この問題に対処するため、新たな治療法が注目されています。

それが「静脈内アミノ酸投与」です。

最近発表された研究では、この治療法がAKIの発生を減らす可能性があることが示されました。

 

この研究は、22の医療施設で行われ、心臓手術を受ける患者を対象としました。

参加した患者さんは、アミノ酸を投与されたグループと、プラセボ(効果のない液体)を投与されたグループに分けられました。

その結果、アミノ酸を投与されたグループでは、AKIが発生する率が26.9%にとどまり、プラセボグループの31.7%と比較して有意に低いことがわかりました。

 

 

さらに、特に重篤なステージ3のAKIが発生した患者さんは、アミノ酸グループで1.6%、プラセボグループでは3.0%でした。

つまり、重篤な腎障害を予防する効果も期待できるのです。

 

この研究の結果を簡単にまとめると、以下のようになります。

 

AKIの発生率: アミノ酸グループ 26.9%、プラセボグループ 31.7%

重篤なAKI(ステージ3)の発生率: アミノ酸グループ 1.6%、プラセボグループ 3.0%

腎代替療法の使用率: アミノ酸グループ 1.4%、プラセボグループ 1.9%

 

これらの結果から、アミノ酸を投与することで心臓手術後の腎障害のリスクを減らせる可能性が高いことがわかります。

そして何より、治療を受けた患者さんに重大な副作用がなかったことも安心材料の一つです。

 

もちろん、治療法の選択については医師と相談することが重要ですが、今回の研究結果が新たな治療の選択肢として加わることは、とても良いことですね。

 

参考文献:

Landoni G, Monaco F, Ti LK, et al. A Randomized Trial of Intravenous Amino Acids for Kidney Protection. N Engl J Med. 2024;391(8):687-698. doi:10.1056/NEJMoa2403769