生活の中で、スマートフォンやタブレットが手放せない現代では、家族との時間が極端に減っている感じがします。
子どもには「スマホばかり見ないで!」と叱っている親も、言っているそばから親自身がLINEのやり取りをしていたりします。
実は、親がデジタルデバイスに夢中になり、子どもとのコミュニケーションが疎かになる現象は、「テクノフェレンス(technoference)」と呼ばれ、子どものメンタルヘルスに影響を与える可能性があることがわかっています。
「テクノフェレンス(technoference)」というのは造語です。
この言葉は「technology(テクノロジー)」と「interference(干渉)」の組み合わせによって生まれました。
カナダのカルガリーで行われた研究では、9歳から11歳の子どもたちとその母親を対象に、親のテクノフェレンスが子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるかを調査しました。
参加者は1,303人で、調査は3回にわたって行われ、子どもたちは親がどれほどデバイスを使用していると感じているか、そして自分のメンタルヘルスの状態(不安、うつ、注意散漫、過活動)について回答しました。
結果として、次のようなことが明らかになりました。
1. 不安が高い子どもほど、親のテクノフェレンスを強く感じる
子どもが9歳と10歳の時点で不安を強く感じている場合、11歳になると親がデバイスに依存していると感じる傾向が高まることがわかりました。これは、小さな効果サイズ(β=0.11から0.12)ではあるものの、親が子どもの不安を和らげるためにもっとデジタルデバイスに頼る可能性を示しています。
2. 親のテクノフェレンスが子どもの注意散漫や過活動を引き起こす
親が9歳と10歳の時点でデバイスに夢中になっている場合、その後の調査で子どもたちの注意散漫や過活動が増加する傾向が見られました。この影響もまた小さなものでしたが、特に11歳の時点での注意散漫(β=0.12)と過活動(β=0.11)に関連していました。
この研究は、親がスマホやタブレットに夢中になることで、子どもたちの心にどのような影響を与えるのかを明らかにしています。
特に、親がデバイスに集中することで、子どもたちが感じる不安が増すだけでなく、注意散漫や過活動が引き起こされる可能性があるのです。
現代の親にとって、テクノロジーは避けられない存在です。
しかし、この研究は、親としての役割を果たす上で、どれだけデバイスに頼るかを見直す良い機会を提供しているのではないでしょうか。
親子間のコミュニケーションを大切にし、子どもたちが健全な心を保つためには、デジタルデバイスとの付き合い方を「親が」改めて考える必要があるのかもしれません。
参考文献:
Deneault AA, Plamondon A, Neville RD, et al. Perceived Parental Distraction by Technology and Mental Health Among Emerging Adolescents. JAMA Netw Open. 2024;7(8):e2428261. Published 2024 Aug 1. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.28261
