認知症は、年齢を重ねたら、ある程度仕方がないのかなと“あきらめ”てしまっているフシがなくもないです。
つまり、認知症を「避けられない老化現象」だという思い込みです。
けれども、単なる慰めでなく、実はその半数近くが予防したり、進行を遅らせたりが可能であることを、フィラデルフィアで開催されたアルツハイマー協会国際会議2024で報告されました。
それによると、世界中の認知症症例の約50%が、14の修正可能なリスク要因を管理することで回避できる可能性があるとのことです。
14の修正可能なリスク要因とは、具体的には以下の通りです。
1. 低教育水準(特に幼少期の教育)
2. 聴覚障害
3. 高血圧
4. 喫煙
5. 肥満
6. うつ病
7. 身体活動の欠如
8. 糖尿病
9. 過度のアルコール消費
10. 外傷性脳損傷
11. 大気汚染
12. 社会的孤立
13. 高コレステロール値
14. 視力低下
これらのリスク要因は、適切な管理や介入によって、認知症のリスクを減らすことができるとされています。
報告書は、これらの要因に早めに対処することで、認知症の発症を予防または遅延させる可能性があると強調しています。
この報告では、新たに「高コレステロール値」と「視力低下」が認知症のリスク要因として挙げられました。
これにより、認知症と関連するリスク要因は合計で14に増え、これらが全症例の約40%に影響を与えているとされています。
具体的には、高LDLコレステロールが約7%の症例に、視力低下が2%の症例に関与していると推定されています。
さらに、聴覚障害や高LDLコレステロールが、それぞれ7%という高い割合で認知症のリスクに結びついており、他にも低教育水準や社会的孤立が5%ずつのリスク要因として指摘されています。
これらの数字からも、生活習慣や健康管理の重要性がうかがえます。
では、具体的にどのようにして認知症リスクを減らすことができるのでしょうか?
報告書は、以下のような対策を推奨しています:
– 聴覚や視力の低下に早めに対処すること
– 終生にわたり脳を活性化させる活動を続けること
– 接触スポーツでは頭部を保護すること
– 高コレステロール、糖尿病、肥満、高血圧といった血管リスクを減らすこと
– 空気の質を改善し、健康的なコミュニティを築くこと
これらの対策を実行するには、個々人の努力はもちろん、医療システムや政策立案者の協力も欠かせません。
そして何よりも重要なのは、認知症を避けられないものとしてではなく、積極的に予防できるものとして捉える視点の転換です。
この報告は、認知症を「避けられない老化現象」から「予防可能な健康課題」へと変える大きな一歩となるかもしれません。
参考文献:
Livingston G, Huntley J, Liu KY, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. Published online July 30, 2024. doi:10.1016/S0140-6736(24)01296-0