高齢者にインターネットを利用してもらおう

 

インターネットは私には難しいからわからん!と最初から近づきもせず、近づけもしない高齢者の方が少なくない気がします。

けれども、最近の研究によれば、インターネットを使用しない高齢者は、使用している人々に比べて抑うつ症状のリスクが高いことが明らかになりました。

この調査は、世界32か国の60歳以上の高齢者129,847人を対象に行われ、5つの長期縦断コホート研究(HRS、ELSA、SHARE、CHARLS、MHAS)のデータを基にしています。

調査によると、インターネットを使用しない高齢者の割合は国によって大きく異なります。

例えば、アメリカのHRSでは46.0%、イギリスのELSAでは32.6%、ヨーロッパのSHAREでは54.8%、中国のCHARLSでは92.3%、メキシコのMHASでは65.3%でした。

これらの国々の高齢者において、インターネットを使用しないことが抑うつ症状とどのように関連しているかを分析した結果、以下のような傾向が見られました。

 

– アメリカの高齢者(HRS)では、インターネットを使用しないことで抑うつ症状が1.13倍(95%信頼区間: 1.07–1.20)増加する

– イギリスの高齢者(ELSA)では、1.22倍(95%信頼区間: 1.11–1.34)増加

– ヨーロッパの高齢者(SHARE)では、1.55倍(95%信頼区間: 1.47–1.62)増加

– 中国の高齢者(CHARLS)では、1.49倍(95%信頼区間: 1.26–1.77)増加

– メキシコの高齢者(MHAS)では、1.48倍(95%信頼区間: 1.39–1.58)増加

 

これらのデータから明らかなのは、インターネットを使用しない高齢者が抑うつ症状を感じるリスクが非常に高いということです。

この背景には、インターネットを通したコミュニケーションの機会が得られないばかりでなく、情報弱者となってしまことなどが大きく影響しているようです。

特に、インターネットを通じて家族や友人と連絡を取り合うことができないと、孤独感や社会的な孤立感が増し、抑うつ症状が悪化してしまうことになります。

さらに、この研究では、特に80歳未満、未就労、最貧困層、低学歴、日常生活動作(ADL)や手段的日常生活動作(IADL)に困難のない高齢者において、このリスクが顕著であることが示されています。

これらの高齢者がインターネットにアクセスできるようになることで、抑うつ症状のリスクを軽減できるかも知れません。

では、どうすれば高齢者がインターネットをより活用できるようになるのでしょうか。

まずは、高齢者が使いやすいインターフェースでなければなりません。

それから、サポート体制を整える必要があります。

家族や地域社会が協力して、デジタル社会においても「高齢者を独りにさせない」ということが重要であるということですね。

 

参考文献:

Yan R, Liu X, Xue R, et al. Association between internet exclusion and depressive symptoms among older adults: panel data analysis of five longitudinal cohort studies. eClinicalMedicine. 2024;75:102767. doi:10.1016/j.eclinm.2024.102767