高血圧は大きな健康問題の一つです。
最近の研究で、血液中の尿酸値とクレアチニンの比率(SUA/sCr)が高血圧の死亡率に関与していることが明らかになりました。
クレアチニンについてはこのブログで何度も説明していますが、筋肉の代謝過程で生成される老廃物で、腎機能を評価するために血液検査で測定されます。
この研究では、アメリカのNHANES(National Health and Nutrition Examination Survey)という大規模な健康調査データを使用し、1999年から2018年までの高血圧患者21,198名を対象にしました。
そのうち、妊娠中の方やがんの既往歴がある方などを除外し、最終的に15,269名を分析対象としました。
研究者たちは、参加者の尿酸とクレアチニンの比率(SUA/sCr)に基づいて6つのグループ(≤4、>4~5、>5~6、>6~7、>7~8、>8)に分類し、それぞれのグループで全死亡率および心血管死亡率を比較しました。
最も低いSUA/sCrグループ(≤4)の全死亡率は、最も高いグループ(>8)に比べて43%も高かったのです。

SUA/sCrが低いというのは、クレアチニンの値が尿酸値に比べて低いということ、つまり、腎機能が低下しているということを意味します。
さらに、心血管死亡率についても、最も低いグループは最も高いグループに比べて2.8倍高いことがわかりました。

具体的な数値を示すと、全体の参加者15,269名中、全死亡率は22.1%(3,664名)、心血管死亡率は6.5%(1,084名)でした。
SUA/sCrが低いと、これらのリスクが大幅に増加することが確認されました。
なぜSUA/sCrが重要なのでしょうか。
尿酸は体内の老廃物の一種で、通常は腎臓で排出されますが、腎機能が低下すると血中尿酸値が上昇します。
一方、クレアチニンは筋肉の代謝産物で、これも腎臓で排出されるため、腎機能の指標とされます。
このため、SUA/sCr比は腎機能を反映する重要な指標となります。
ここで注意していただきたいのは、尿酸値が低すぎる場合も、死亡リスクが高まることです。
健診では悪役の代表選手のような尿酸ですが、尿酸は通常、抗酸化作用を持つため、実は適度なレベルが健康維持に必要なのです。
尿酸値が低すぎると、体内での酸化ストレスや炎症反応の抑制が不十分になる可能性があります。
個人の健診結果が得られたら、尿酸とクレアチニンの比率を計算して、バランスを確かめてもいいかも知れませんね。
参考文献:
ang, Z., Liu, H., Ding, Y. et al. Association between serum uric acid to serum creatinine ratio with cardiovascular and all-cause mortality in adults with hypertension. Sci Rep 14, 18008 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-69057-4
