何が起こるかわからない時が不安になる:ヒッチコックの技法

何が起こるかわからない時が不安になる:ヒッチコックの技法

 

不確実性が引き起こす不安とそれを回避する行動についての研究は、私たちの日常生活に大きく関わってくるものです。

そして、映画監督アルフレッド・ヒッチコックは、そのテーマの第一人者と言えます。

彼の映画は、不確実性と緊張感で観客を引きつけますから。

今回の研究も、まさにヒッチコックの映画のように、不確実性がどのようにして不安を引き起こし、人々の行動にどのような影響を与えるのかを調査しました。

具体的には、コンピュータ画面上で一定の時間後に予期しない出来事が起こることを告げ、参加者の心拍数や皮膚電気反応といった生理的指標を測定しました。

また、不確実性が続く時間が異なる状況を設定し、各段階での不安レベルをアンケート形式で評価しました。

この研究では、以下の点が明らかになりました。

 

不確実性の増加が不安を高める:不確実な状況が長引くほど、人々の不安レベルが上昇することが観察されました。具体的には、予期しない結果や未知のリスクに直面すると、不安感が強まります。「次に何が起こるのか分からない時の緊張感」と言えば何度も経験したことがあるでしょう。

回避行動の発生:不安を感じた人々は、リスクを避けるために回避行動を取る傾向が強まります。例えば、困難な決断を先送りにしたり、挑戦的な状況を避けることが多くなります。

不確実性の時間的影響:不安は瞬間的なものだけでなく、時間が経つにつれて蓄積されることが分かりました。長期的な不確実性は、持続的な不安と回避行動を引き起こす要因となります。映画のクライマックスに向けて緊張が高まるように、不安も時間とともに増大します。

対処メカニズム:人々は不安を軽減するために、予測可能性を高めようとする行動を取ります。具体的には、情報収集や計画を立てることで、不確実性を減少させようとします。

 

この研究は、私たちが日常生活で感じる不安の多くが不確実性に起因していることを示しています。

例えば、将来の仕事の見通しが不明確な場合、私たちは不安を感じ、その結果としてあらゆる選択を躊躇することがあります。

この研究は、不確実性が私たちの心理に与える影響を理解しようとするものですが、ヒッチコック監督はすでにそれを知り尽くしていて、その技法を駆使することで、様々な名作を生み出していったのですね。

 

参考文献:

Sarasola M, Bello-Cerezo J, Linares R, et al. Temporal Dynamics of Uncertainty Cause Anxiety and Avoidance. J Behav Ther Exp Psychiatry. Published online July 24, 2023. doi:10.1016/j.jbtep.2023.101751