コーヒーポリフェノールはストレスによる認知障害を防いでくれる(マウスの実験)

コーヒーポリフェノールはストレスによる認知障害を防いでくれる(マウスの実験)

 

幼少期のストレスが脳に与える影響について、最近の研究で多くのことが明らかになってきています。

幼少期は脳の発達が著しい時期であり、この時期に経験するストレスは、後の人生での認知機能や精神的健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

幼少期のストレスとは、例えば家庭内の不和、虐待、ネグレクトなどが含まれます。

このようなストレスは、脳の発達に影響を与え、特に海馬と呼ばれる記憶や学習に重要な役割を果たす部分に大きなダメージを与えることがわかっています。

海馬のダメージは、成人後の記憶力や学習能力の低下、さらにはうつ病や不安障害などの精神疾患のリスクを高めます。

ここで注目されるのが、栄養介入による脳への保護効果です。

特に、ポリフェノールという植物由来の抗酸化物質が有望視されています。

ポリフェノールは多くの果物や野菜に含まれており、抗酸化作用や抗炎症作用が知られています。

コーヒーにも豊富に含まれているカフェ酸やクロロゲン酸といったポリフェノールは、脳の健康を保つために重要な役割を果たす可能性があると考えられています。

今回の研究では、コーヒーポリフェノールが幼少期のストレスによって引き起こされる認知障害を予防できるかどうかを調査しました。

具体的には、マウスを用いて以下のような実験を行いました。

 

  • 幼少期のストレス(ES)は、オブジェクト認識タスク(ORT)とオブジェクト位置タスク(OLT)での認知障害を引き起こしました。
  • カフェ酸とクロロゲン酸を含む食事を摂取したESマウスは、これらの認知障害が緩和されました。
  • 神経新生(新しい神経細胞の生成)の生存率は改善しましたが、ESの影響を完全に逆転させるわけではありませんでした。
  • マイクログリア(脳内の免疫細胞)の活性化を調節する可能性があります。

 

これらの結果は、幼少期の食事にポリフェノールを加えることで、将来的な認知機能の低下を予防する新しい栄養介入の可能性を示しています。

研究の背景には、ポリフェノールが脳の炎症を抑え、神経新生(新しい神経細胞の生成)を促進する可能性があるという仮説があります。

これまでの研究でも、ポリフェノールが認知機能を改善する効果が示されてきましたが、特に幼少期のストレスによる影響をどの程度緩和できるかについては、十分な検証が行われていませんでした。

この研究は、幼少期のストレスが脳に与える影響を軽減するための新しい方法として、ポリフェノールを含む食事の有効性を検証する重要な一歩となります。

 

参考文献:

Geertsema J, Kratochvil M, González-Domínguez R, et al. Coffee polyphenols ameliorate early-life stress-induced cognitive deficits in male mice. Neurobiol Stress. 2024;31:100641. doi:10.1016/j.ynstr.2024.100641