「話を聞かない男、地図が読めない女」というベストセラーがありました。
「男脳、女脳が『謎』を解く」というのがサブタイトルだったと思います。
今回紹介する研究は、そのBeginningを解き明かそうというものです。
最近発表された研究によると、3歳から10歳の男児は、女児よりも正確に方向を示す能力が高いことが明らかになりました。
この研究は「Journal of Experimental Child Psychology」に掲載され、141人の子供を対象に行われました。
研究者たちは、男児と女児の「道を案内する」指示の精度を比較し、その違いを探りました。
特に興味深いのは、男児と女児がランドマーク(建物や標識などの目印)や曲がり角を示す頻度には差がなかったことです。
なぜ興味深いかというと、これまでの研究では、成人では、男性は方位を使うことが多く、女性はランドマークに依存する傾向があることが知られていたからです。
研究に参加した子供たちは、Zoomを使って約30分のセッションに参加しました。
Unity 3Dソフトウェアを用いて作成された4つの仮想環境が使用され、それぞれの環境には5つの決定ポイントと10のランドマークが含まれていました。
子供たちは、地図または一人称視点のビデオを使ってこれらの環境を探検しました。
実験は3つのフェーズに分かれており、最初に子供たちは自由に見たものを記述し、次に盲目のキャラクターにルートを指示し、最後にルートを記憶から再現しました。
結果、男児はルート指示フェーズで優れた精度を示しましたが、ルート再現フェーズでは男女に差は見られませんでした。
言語の使用頻度については、男児と女児に大きな違いはなく、男児が質の高い方向指示の言葉を使うことで精度が高かったことが分かりました。
また、年齢が上がると方向指示のスキルが向上することも分かりました。
地図を使った場合、ビデオよりも正確な方向指示ができることが示されました。
これらの結果は、教育において地図の使用が効果的であることを示しています。
子供たちの空間認知の違いを理解することは、教育戦略に重要な影響を与える可能性があります。
特に、科学、技術、工学、数学(STEM)分野で必要とされる空間スキルの向上に役立つでしょう。
研究者たちは、空間認知の性差を探ることで、子供たちの認知発達の基本を理解し、教育や親の支援に役立てることを目指しています。
参考文献:
Yacoub N, Lakusta L, Yang Y. Sex differences in direction giving: Are boys better than girls?. J Exp Child Psychol. 2024;244:105958. doi:10.1016/j.jecp.2024.105958
