健康と環境を考える:植物由来の肉代替品の役割

 

植物由来の肉代替品を検索すると、まず、その種類の豊富さにびっくりすることになります。

例えば、ビヨンドミート(Beyond Meat)は、大豆やエンドウ豆、ビートジュースなどから作られた製品で、ハンバーガーパティやソーセージなどの形で販売されています。

セイタン(Seitan)は、小麦グルテンを主成分とする、非常に高タンパクで低脂肪な代替品です。

また、インポッシブルバーガー(Impossible Burger)は、大豆ヘムを使用して肉のような風味を再現しています。

どれも、本物の肉に近い味と食感が特徴で、植物由来の食材とは思えないほどのクオリティなのだそうです。

それに加えて、環境や健康への配慮もあって、人気が高まっているのですね。

実際に、これらの製品が健康にどのような影響を与えるのかというのは、詳しく調査する必要があります。

今日紹介する論文は、そんな内容です。

まず、植物由来の肉代替品は、飽和脂肪酸(SFA)が少なく、不飽和脂肪酸(PUFA)が多いのが特徴です。

飽和脂肪酸は心血管疾患(CVD)のリスクを高めるとされていますが、不飽和脂肪酸はそのリスクを低減する可能性があります。

例えば、ある研究では、植物由来の肉代替品を摂取することで、血中の悪玉コレステロール(LDL-C)が減少し、トリグリセリド(TG)も低下することが報告されています。

さらに、植物由来の肉代替品は食物繊維が豊富で、コレステロールを含まないため、血中脂質プロファイルの改善に役立つと考えられます。

食物繊維は腸内環境を整え、コレステロール値を下げる効果があります。

また、植物性タンパク質には多くの利点があります。

大豆やマイコプロテインなどの植物性タンパク質は、動物性タンパク質と同等かそれ以上に筋肉の合成を促進します。

特に、大豆に含まれるイソフラボンは、血圧やコレステロール値を改善し、心血管リスクの低減に寄与します。

これだけ、良い点をあげたのだから、じゃあ植物由来の肉代替品に変えたら良くね?となりそうですが、実際はそんなに単純でもないのです。

現時点で行われている多くの研究は短期的なもので、長期的な健康影響についてはまだ明確ではないということ。

種類が多いというのも実は問題です。

それぞれが、その成分や製法によって栄養プロファイルが大きく異なっています。

例えば、飽和脂肪酸やナトリウムの含有量が製品によって差があり、これが心血管系リスクに与える影響を評価する際の大きな変数となります。

そして、なんといっても加工食品であることの懸念です。

高度な加工食品は、一般的に健康リスクが高いとされているので、植物由来の肉代替品だけが例外でいいのか、まだ不明な点があるのではないかという懸念です。

要するに、これらには心血管系リスクを低減する可能性があるという期待がありますが、それを確実に言うためにはさらなる高品質な長期研究が必要ということです。

現時点では、過度に依存せず、バランスの取れた食事を心がけることが重要ということになるのでしょう。

 

参考文献:

Nagra M, Tsam F, Ward S, Ur E. Animal vs Plant-Based Meat: A Hearty Debate. Can J Cardiol. Published online April 10, 2024. doi:10.1016/j.cjca.2023.11.005