コレステロールについては、多くの人が「低ければ低いほど良い」と思い込んでいるものです。
しかし、最新の研究によると、これは必ずしも正しくないかも知れません。
ピッツバーグ大学医療センターの研究チームが行った大規模後ろ向きコホート研究の結果、50歳から89歳の糖尿病のない成人を対象に、LDLコレステロール(いわゆる「悪玉コレステロール」)の値が必ずしも低いほど良いわけではないことが報告されました。
研究では、2000年から2022年までのデータを使用し、177,860人の成人を評価しています。
参加者は全員スタチン療法を受けていない人々で、その中からコレステロール値の異常に低い人や、最初の1年以内に死亡した人は除外されました。
その結果、LDLコレステロール値が100–189 mg/dLの範囲で最も低い死亡リスクが観察されました。
具体的には、この範囲の人々の10年間の死亡率が最も低く、80–99 mg/dLのグループに比べてむしろやや低いリスクを示しました。
いわゆるU字型のグラフを示しています。
この結果は、一般的に信じられている「LDLコレステロールは低い方が良い」という考えとは異なるものです。
さらに、他のコレステロール比率、例えば総コレステロールとHDLコレステロール(善玉コレステロール)の比率やトリグリセリドとHDLコレステロールの比率も調べました。
そして、これらの比率が長期的な死亡リスクに強く関連していることが明らかになりました。
適正な総コレステロール/HDLコレステロール比は3.0以下であり、5.0を超えると死亡リスクが高まることが示されています。
同様に、トリグリセリド/HDLコレステロール比についても、1.0以下が理想的であり、1.06以下のグループでは死亡リスクが24%低いことが報告されています。
比率が高くなると、死亡リスクが増加するため、これらの指標を適正な範囲に保つことが重要となります。
この研究結果は、これまでの「LDLコレステロールは低ければ低いほど良い」という一般的な考え方に疑問を投げかけるものです。
特にLDLコレステロールが100–189 mg/dLの範囲であれば、現在の推奨値よりも高い値であっても心配する必要がないのかも知れません。
もちろん、コレステロール値だけでなく、食生活や運動、禁煙、ストレス管理など、生活習慣全体を見直すことが、より健康な生活を送るための鍵となるのは言うまでもありません。
参考文献:
Kip KE, Diamond D, Mulukutla S, et al. Is LDL cholesterol associated with long-term mortality among primary prevention adults? A retrospective cohort study from a large healthcare system. BMJ Open 2024;14:e077949. doi:10.1136/ bmjopen-2023-077949
