肥満は多くの健康問題を引き起こします。
そのため、体重を減らすことが肥満治療の主要な目標となっていきます。
例えば、2型糖尿病の人が体重の5~10%を減らすと血糖値が改善し、15~25%を減らすと糖尿病が治ることもあると言われています。
体重を大幅に減らす方法としては、減量手術が一般的ですが、最近ではGLP-1という薬を使った新しい治療法も注目されています。
この薬を使うと、1年から1年半で体重が15~25%も減ることが期待できるのだそうです。
しかし、体重を減らすときには注意が必要です。
脂肪が減るだけでなく、筋肉も一緒に減ってしまうことがあるからです。
筋肉は体の中で脂肪以外の部分(除脂肪体重)の約半分を占めています。
体重が減ると、その約25%が筋肉や他の脂肪以外の部分から減少します。
特に、最初に持っていた脂肪の量や総体重の減少量によって、その割合が変わるのです。
GLP-1受容体作動薬による体重減少は大きな効果をもたらしますが、それに伴って筋肉量も減少することがあります。
この薬を使って体重が25%減った場合、そのうちの25~40%が筋肉や他の脂肪以外の部分からの減少になります。
しかし、この筋肉量の減少が実際に体の機能に悪影響を及ぼすというデータはまだありません。
肥満の人は元々筋肉量が多いので、体重を減らしても筋肉が減る割合は少なく、体の動きやすさはむしろ改善されることが多いのです。
体重を減らすと筋肉量が減る理由は、筋肉のタンパク質が分解されるからです。
これを防ぐためには、タンパク質の摂取量を増やすことや運動を取り入れることが有効です。
例えば、タンパク質の摂取量を1日あたり0.8グラムから1.2グラムに増やすと、筋肉の減少を45%も抑えることができます。
また、運動、特に筋トレを行うと、筋肉の減少を50~95%も抑えることができます。
それから、体重を減らした後に再び体重が増えることも多くあります。
特に、薬の使用をやめると、体重が戻ってしまうことが多いのです。
GLP-1受容体作動薬の場合、治療をやめると1年以内に減った体重の半分から2/3が戻ってしまうことがあります。
しかし、再び体重が増えても、その増え方は元の体重の増え方とほぼ同じで(それ以上に増えることはない)、特に問題になることは少ないです。
このように、体重減少に伴う、特に筋肉量の減少については注意が必要です。
薬だけに頼らず、食事と運動については、やはりマジメに取り組んでいく必要があります。
元論文:
Conte C, Hall KD, Klein S. Is Weight Loss-Induced Muscle Mass Loss Clinically Relevant?. JAMA. Published online June 3, 2024. doi:10.1001/jama.2024.6586
