2024年3月末、ニューメキシコ州の酪農場で、牛の鼻腔と牛乳から初めて高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAI)のH5N1亜型が検出されました。
人間の食卓に届く可能性がありますし、心配の声が挙がるのは当然のことです。
この発見に対し、科学者たちの行動は迅速でした。
検出されたウイルスは、他の動物から分離されたウイルスと同じ系統であり、これまでのデータと一致していることが分かりました。
これは、牛へのウイルス感染が偶発的なものではなく、何らかの経路で伝播している可能性を示しています。
さらに興味深いのは、このウイルスが牛乳にどれほどの耐性を持っているかという実験結果でした。
科学者たちは、牛乳に含まれるウイルスが、熱にどれほど耐えることができるかを調べました。
その結果、63°Cで加熱することでウイルスの大部分を不活化できると、72°Cではさらにウイルス量が減少することが確認されましたが、完全には殺菌できていないことがわかりました。
牛乳の成分がウイルスを保護しているのかもしれません。
さらに、科学者たちは冷蔵保存された牛乳中でウイルスがどれくらい生存できるかも調査しました。
その結果、低温でも数週間は生き残る可能性があることが示されました。
また、感染した牛乳をマウスに与えたところ、速やかに病気の兆候を示しました。
これがすぐにヒトにあてはまるものではありませんが、今後の動向を注意深く見守る必要があります。
元論文:
Guan L, Eisfeld AJ, Pattinson D, et al. Cow’s Milk Containing Avian Influenza A(H5N1) Virus – Heat Inactivation and Infectivity in Mice. N Engl J Med. Published online May 24, 2024. doi:10.1056/NEJMc2405495
