セマグルチドと2型糖尿病患者の慢性腎臓病

 

セマグルチドという薬は、2型糖尿病治療のためのグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬です。

週に一度の皮下注射や経口薬として使用され、血糖値の管理と体重減少に効果があります。

特に、肥満患者に対して体重減少をもたらすことが注目されている薬剤です。

そのセマグルチドが、2型糖尿病患者の慢性腎臓病(CKD)の進行を遅らせる可能性が示されました。

CKDは世界中で5億人以上が罹患しており、その多くが腎不全や心血管イベント、死亡のリスクを抱えています。

今回は、セマグルチドがこれらのリスクを軽減するかどうかを検討したFLOW試験の結果を紹介します。

 

FLOW試験は、2型糖尿病とCKDを併発する患者におけるセマグルチドの有効性と安全性を評価することを目的としました。

特に、腎不全、顕著な腎機能低下、心血管関連死の予防効果を調査しました。

 

この試験には、推定糸球体濾過率(eGFR)が25〜75 ml/分/1.73 m²で、尿中アルブミン対クレアチニン比が>300かつ<5000の成人患者が参加しました。

セマグルチド1.0 mgを週1回皮下注射する群と、プラセボを投与する群に無作為に分けられました。

主要評価項目は腎疾患イベントの発生率で、副次的評価項目として心血管イベントや全死亡率も評価されました。

 

3533名の参加者のうち、1767名がセマグルチド群、1766名がプラセボ群に割り当てられました。

中央値3.4年の追跡期間中、セマグルチド群では主要評価項目の発生率が24%低下しました(セマグルチド群331例、プラセボ群410例、ハザード比0.76)。

心血管イベントのリスクは18%低下し、全死亡率は20%低下しました。

年間のeGFRの低下速度もセマグルチド群で有意に緩やかでした。

 

セマグルチドは、2型糖尿病とCKDを有する患者で、腎不全や心血管イベントのリスクを有意に減少させ、腎機能の低下を遅らせる効果が確認されたのでした。

この結果は、セマグルチドがこの高リスク群における新たな治療選択肢となり得ることを示しています。

 

今後は、CKD患者に対するGLP-1受容体作動薬の適用は、さらなる研究が求められます。

特に、他の治療薬との併用効果や長期的な安全性についての詳細な検討が必要です。

セマグルチドが示す多面的な保護効果のメカニズムを明らかにすることも、今後の研究課題となるでしょうね。

 

元論文:

Perkovic V, Tuttle KR, Rossing P, et al. Effects of Semaglutide on Chronic Kidney Disease in Patients with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. Published online May 24, 2024. doi:10.1056/NEJMoa2403347