ビタミンCは感染症の治療に役立つのか

 

感染症に対する「ビタミンCの効果」については、忘れたころに研究報告が浮上してきて、そしてまた静かに沈んでいく…ということの繰り返しの感じがします。

ビタミンCは、言わずもがな、私たちが普段から果物などで摂取している栄養素です。

風邪をひいた時によく「ビタミンCを取りなさい」と言われるのは、このビタミンには体の防御力を高める効果があるとされているからです。

ただし、その真偽は科学的にどうなのかというと、いつも議論の的となります。

そんなビタミンCですが、実は、犬や猫はビタミンCを体内で合成できるため、外部から摂取する必要がありません。

一方、ヒトやモルモット、いくつかの霊長類、コウモリ、鳥類の一部(例えばインコ)は、ビタミンCを合成する遺伝子(GULO遺伝子)が機能していないため、外部から摂取する必要があります。

ビタミンC合成の進化的背景については、酸素が増加した地球環境の中で、酸化ストレスに対抗するために多くの生物がビタミンCを生成するようになったと考えられています。

日光を浴び続ける緑黄色野菜や果物に、ビタミンCが豊富であるというのも、その植物自身に抗酸化作用をフル稼働させている結果といえるのでしょうね。

 

そして、ここからが本題なのですが、今回紹介する研究は、市中肺炎(CAP)の治療にビタミンCが有効かどうかというものでした。

この研究では、ビタミンCを補給したグループと、補給しなかったグループの死亡率を比べました。

結果として、ビタミンCを補給したグループの方が死亡率が低い傾向が見られましたが、統計的に大きな差とは言えませんでした(RR 0.51; 95% CI 0.24〜1.09; p = 0.052)。

ビタミンCが入院期間や集中治療室(ICU)の滞在期間に与える影響も調べました。

ビタミンCを補給した患者は入院期間が短い傾向がありましたが、これも統計的には有意ではありませんでした。

また、これらの結果には異なる要因が混ざっているため、注意が必要です。

ビタミンCの安全性についても調査されました。

副作用はほとんどなく、吐き気や嘔吐、低血圧、頻脈が一部の患者に見られただけでした。

ビタミンCの補給がCAPの治療に有益である可能性がありますが、その効果をはっきりさせるためには、さらに多くの研究が必要のようです。

実は、この手の研究の結論は毎回こんな感じなのです。

ビタミンCが万能薬と思っている人はいないと思うのですが、今の結論だと、副作用も少ないですし、風邪をひいたときには果汁ジュースでも飲んで、治癒力を高めようぜ!とするぐらいがちょうどいいのかなと思います。

 

元論文:

Sharma Y, Sumanadasa S, Shahi R, et al. Efficacy and safety of vitamin C supplementation in the treatment of community-acquired pneumonia: a systematic review and meta-analysis with trial sequential analysis. Sci Rep. 2024;14(1):11846. Published 2024 May 24. doi:10.1038/s41598-024-62571-5