腎不全のリスクを特定するために

 

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の機能が低下する病気で、特に進行したステージ4のCKDは注意が必要です。

しかし、CKDの診断基準には様々な方法があり、それによって診断される患者の数やその後の経過が異なることがあります。

カナダのアルバータ州で行われた研究では、18歳以上の住民を対象に、2015年から2018年までの間に新たにステージ4 CKDと診断された人々のデータを分析しました。

4つの異なるアルゴリズムを使用してCKDの診断を行い、それぞれの発生率や予後の違いを調べました。

最初に、最も単純な方法は一度の腎機能検査(eGFR)で腎機能が低下しているかどうかを確認するものでした。

この方法では、100,000人あたりの発生率は190.7人と高く、腎機能が改善する可能性も比較的高いことが分かりました。

しかし、この方法では一時的な腎機能低下の患者も含まれるため、実際にはCKDではない場合もあります。

次に、2回のeGFR測定を90日以上間隔を空けて行う方法があります。

この方法では、発生率は116.6人に減少し、診断精度が向上します。

さらに、90日間持続的に低いeGFR値を確認する2つのアルゴリズムを使用しました。

これらの方法では、発生率はさらに低くなり、最も厳格なアルゴリズムでは79.9人となりました。

予後については、単一の測定方法では1年後のeGFR改善確率が34%と高く、腎不全のリスクは1.5%と低いことが分かりました。

一方、厳格な持続的測定方法では、eGFR改善確率は6%と低く、腎不全のリスクは3%と高くなりました。

これにより、厳格なアルゴリズムを使用することで、重症患者をより正確に特定できることが示されています。

さらに、アルブミン尿のレベルごとに予後を調べた結果、アルブミン尿が重度であるほど腎不全のリスクが高くなることが確認されました。

また、アルブミン尿が正常から軽度の患者は、2回のeGFR測定や持続的なアルゴリズムで診断された場合、1年後のeGFR改善確率が高いことが分かりました。

 

 

この研究から分かったことは、CKDの診断基準が厳格になるほど、診断される患者の数は減少し、腎機能が改善する可能性も低くなるということです。

しかし、これにより、よりリスクの高い患者を正確に特定できるため、適切な治療が行いやすくなります。

つまり、厳格な基準を用いることで、より正確な診断と予後の予測が可能になり、患者一人ひとりに合った治療方針を立てやすくなるのです。

CKDの診断には慎重さが求められます。

診断基準を選ぶ際には、その基準がもたらす影響を十分に考慮する必要があります。

今回の研究結果は、臨床現場での診断方法の選択に大きな示唆を与えるものであり、より良い診療と患者ケアに貢献することが期待されます。

 

元論文:

Rath M, Ravani P, James MT, Pannu N, Ronksley PE, Liu P. Variations in Incidence and Prognosis of Stage 4 CKD Among Adults Identified Using Different Algorithms: A Population-Based Cohort Study. Am J Kidney Dis. 2024;83(5):578-587.e1. doi:10.1053/j.ajkd.2023.10.010