コウモリの世界は、私たちが想像する以上に複雑です。
そのせいなのか、研究論文を斜め読みしていると、時々「コウモリ」ネタが出てきます。
今回紹介する研究は、「コウモリがどのようにして鳴き声を使って情報を伝えているのか」についての探求でした。
この研究では、エジプトフルーツコウモリを長期間にわたり観察し、彼らが発する鳴き声を詳細に分析しました。
研究チームは、コウモリたちが日々交わす声のやり取りを記録し、それぞれの鳴き声がどのコウモリによって発され、どのコウモリ宛てであるか、どんな状況で使われているかを特定しました。
その結果、コウモリの鳴き声が、ただの音ではなく、具体的な「メッセージ」を含んでいることが判明したのだそうです。
研究で分かったことの一つは、コウモリの鳴き声が特定のコウモリ(発信者)によって発され、その声が特定のコウモリ(受信者)宛てであることです。
これは、鳴き声に含まれる情報が非常に個別化されており、その声を聞いたコウモリが誰からのメッセージであるかを理解して反応することを意味します。
例えば、食べ物を巡る争いが起こった時、攻撃的な声が発され、その声の「トーン」や「リズム」がその状況を反映しています。
「オレの餌がない!」という単なる抗議の声ではなく、「お前がオレの餌をとったんだろう!この野郎!」といった具合でしょうか。
さらに、鳴き声はその場の状況を反映しており、特定の行動を引き起こすことが明らかにされました。
つまり、コウモリの鳴き声は、単に音を出しているだけでなく、他のコウモリに対して具体的な行動を促す指示として機能しているのです。
このことから、コウモリの社会生活がいかに洗練されているかがうかがえます。
このような発見は、コウモリだけでなく、他の動物や人間の言語の進化にも光を当てるものです。
動物の鳴き声がどのように情報を伝え、それがどのようにして他の個体の行動に影響を与えるのかを理解することは、言語やコミュニケーションの研究において非常に重要です。
私たち自身も、周囲の自然や動物たちとどのように関わり合っているのかをもう一度考える良い機会かもしれませんね。
元論文:
Prat, Y., Taub, M. & Yovel, Y. Everyday bat vocalizations contain information about emitter, addressee, context, and behavior. Sci Rep 6, 39419 (2016). https://doi.org/10.1038/srep39419
