レプチン濃度とアルツハイマー病

 

最近の研究で、脳内のアミロイドβ(Aβ)とタウタンパク質の蓄積と、血液中のレプチン濃度の関係が明らかにされました。

これは、アルツハイマー病(AD)の研究の一環であり、ADの主要な要因の1つが脳内のAβとタウの異常蓄積であることが知られています。

低い血中レプチン濃度は、脳内のAβの蓄積と関連しており、これがアルツハイマー病のリスクを高める可能性があると考えられています。

ところで、レプチンは、アンチエイジングの観点からも非常に興味深いホルモンです。

このホルモンは主に脂肪組織から分泌され、食欲の調節や代謝、脂肪の蓄積、エネルギーの消費に重要な役割を果たしています。

レプチンの働きによって、私たちの体は食べ物を摂取した後の満腹感を感じることができ、食べ過ぎを防ぐメカニズムが働きます。

また、レプチンはインスリン感受性や炎症反応にも影響を与え、これらはすべて加齢と関連する健康問題に直結しています。

レプチンの高いレベルは、レプチン抵抗性と呼ばれる状態を引き起こすことがあり、これは体がレプチンの信号を適切に感じ取れなくなることを意味します。

この状態は、肥満やメタボリックシンドロームの発症に関連しています。

逆に、適切なレプチンの活動は体重管理を助け、加齢に伴う様々な健康問題から身を守る助けとなります。

今回の研究では、そのレプチンが、脳内環境と密接に結びつき、アルツハイマー病の病態を反映させているかもしれないという発見です。

研究では、208人の被験者にPETスキャンを行い、その結果、血中レプチン濃度が低い人ほど脳内のAβの蓄積が多いことがわかりました。

また、192人の被験者を対象に、2年間のフォローアップ調査を行った結果、低い血中レプチン濃度と脳内のタウ蓄積の増加が関連していることも示されました。

ただし、この研究にはいくつかの制限があります。

例えば、血液中のレプチン濃度が脳内の濃度を完全に反映しているかどうかは不明です。

また、研究参加者の選択バイアスの可能性も考慮する必要があります。

今後の研究では、より大規模なサンプルや長期のフォローアップ調査が必要です。

さらに、脳脊髄液中のレプチン濃度を測定することで、より正確な結果が得られる可能性があります。

この研究は、アルツハイマー病のメカニズムを理解する上で重要な一歩であり、将来的にはこの知見を元に、アルツハイマー病の予防や治療に役立つ可能性があります。

 

元論文:

Lee S, Byun MS, Yi D, et al. Plasma Leptin and Alzheimer Protein Pathologies Among Older Adults. JAMA Netw Open. 2024;7(5):e249539. Published 2024 May 1. doi:10.1001/jamanetworkopen.2024.9539