小説を読むことは、認知スキルを向上させる

 

私は、小説を読むのが、映画を観るのと同じぐらい好きです。

学会出張の時には、空港や機内でまとまった時間がとれるので、Kindle端末を携えていくのが恒例となっています。

さて、今回紹介するのは「小説を読むことは私たちの脳にどのような効果をもたらすのか?」について探求した論文です。

長い間、このテーマは、学術的な議論の対象となっていました。

小説を読むことが単に時間を潰す手段でなく、もっと深い知的な利益をもたらす可能性があるとする説です。

今回の研究では、小説を読むことが実際に認知能力にどのような影響を与えるかを、定量的に評価することを目的としました。

研究では、2つの異なるメタ分析が行われました。

メタ分析とは、複数の研究から得られたデータを統合して、より強力な統計的結論を導く手法です。

第一のメタ分析では、参加者を、読書するグループと読書以外の活動を行うグループに、ランダムに割り当てました。

その結果、小説を読むことが認知スキルに統計的に有意なプラスの効果をもたらすことがわかりました。

特に、共感や他者の視点を理解する能力といった、社会的認知スキルの向上が顕著でした。

これは、小説を読むことが人々の感情や考えを理解する助けになるということを示しています。

第二のメタ分析では、読書の量と認知能力との関連を調べました。

この分析では、読書が習慣的に行われている人々は、言語能力や一般的な認知能力が高いことが示されました。

「言語能力」とは、言葉を用いた表現や理解のこと、「一般的な認知能力」とは、論理的思考や問題解決などが含まれます。

小説以外の本、たとえばビジネス本や実用書を読むことや、映画を観ることと比較しても、小説の方が認知能力を高めたのだそうです。

小説を読む行為自体が、何らかの理由で認知プロセスを活性化するのかもしれません。

エンターテイメントだけでなく、私たちの心と脳に対してポジティブな影響を与える一つの手段として、小説を読むことがクローズアップされることになるかも知れませんね。

 

元論文:

Wimmer L, Currie G, Friend S, Wittwer J, Ferguson HJ. Cognitive effects and correlates of reading fiction: Two preregistered multilevel meta-analyses. J Exp Psychol Gen. Published online April 11, 2024. doi:10.1037/xge0001583