3月18日のブログで「アメリカでは、透析に関わるスタッフのことをPCT(Patient Care Technician:患者ケア技術者)と呼ぶのですね。」と投稿したばかりでした。
その時に紹介した論文はJAMA(Journal of the American Medical Association:米国医師会が発行する臨床雑誌)に掲載されたものでした。
内科一般の見地ということですね。
それで、今回のお話は、AJKD(American Journal of Kidney Diseases:アメリカ腎臓財団による腎臓学を専門とする公式ジャーナル)に掲載されたものです。
より専門的な立場での意見といったところになります。
彼らが言うには、「PCT(Patient Care Technician)」という名称が、専門性や役割の重要性をきちんと反映していないので、より適切な名称に変更すべきだという主張です。
単なる「ケア技術者」以上のものとして認識されるべきだという意見です。
なんでそんな話が出るかというと、これはアメリカのお国事情があるようなのですね。
アメリカと日本では透析に関わるスタッフの資格や役割にいくつかの違いがあるようです。
アメリカでは、通常、職業訓練学校やコミュニティカレッジでの短期間のトレーニングプログラムを経て資格を取得します。
日本では、透析治療は主に看護師と臨床工学技士によって行われます。
ご存じの通り、日本でのこれらの職種はそれぞれ国家資格を必要とし、看護師は看護学校を卒業後に国家試験に合格する必要があります。
臨床工学技士も専門学校や大学での学習後、国家試験をパスする必要があります。
アメリカと日本の大きな違いは、資格の要件と職種の範囲です。
アメリカのPCTは比較的短期間のトレーニングで資格を取得でき、特定の透析関連の業務に特化しています。
一方、日本では看護師や臨床工学技士がそれぞれ広範囲の医療業務を担当し、より長い教育と厳しい国家試験を経て資格を取得しています。
また、日本の透析治療におけるスタッフは、機器だけでなく患者ケア全般にわたって高度な専門知識を持っている点が特徴です。
しかし、アメリカでは4万人以上がこの職に就いており、彼らは主に病院やクリニックで透析センターを運営する中核となる存在です。
今回、名称の変更が提案されたのは、彼らの専門性や責任の大きさをより正確に反映し、透析治療における重要な役割をより広く認識してもらおうとするものなのですね。
さらに、名称の変更は彼らのキャリアパスや職業としての地位を明確にして、透析治療分野での専門職としてのプライドを確立するためというのもあるようです。
どんな名称になるのか、見守っていきたいと思います。
元論文:
Plantinga LC, Concepcion DB, Chapman SA, et al. It Is Time to Replace the Term “Patient Care Technician” in Dialysis. Am J Kidney Dis. Published online April 7, 2024. doi:10.1053/j.ajkd.2024.02.013
