「怒り」は、私たちが直面する感情の濁流の一つです。
それをうまく管理できなければ、せっかく築き上げてきた人間関係もたやすく壊してしまいます。
「アンガーマネジメント」とは、怒りを感じた際に、その感情を健康的かつ効果的に管理する方法を学ぶことです。
その目的は、怒りを抑え込むのではなく、それを適切に表現し、問題解決に役立てることにあります。
まず、自分の感情を認識し、それが何に由来するのかを理解します。
次に、怒りを感じる前に、どのようなサインが現れるか、それを早期に察知することが重要です。
それができれば、6秒ルールやタイムアウト、I メッセージなどのあらゆる方法を駆使して、なんとか怒りの波動から自分を遠ざけることです。
今回紹介する研究は、その怒りを抑制する新しい方法についての提案です。
それは、「怒りの原因を紙に書き出して、その紙を実際に破り捨ててしまうこと」。
この研究では、参加者に社会問題をテーマに意見を述べてもらいました。
その後、彼らの意見に対するニセのコメントを受け取りました。
いわゆるSNSでの炎上パターンを再現したような低評価と侮辱的なコメントです。
これによって挑発された参加者たちに、その出来事の原因と自分の感想を再び紙に書き出してもらいました。
そして、参加者の半分はその紙をゴミ箱に捨ててもらったり、シュレッダーで細断してもらいました。
もう半分はその紙を机の上のファイルに入れて保管してもらいました。
結果として、紙を捨てたグループの人々は、怒りがほとんど感じられなくなりましたが、紙を保管したグループの人々は依然として怒りが残っていることがわかったのです。
その理由として、心理的な解放感と象徴的な意味合いが重要であると考察されています。
紙に書かれた内容は、その人の怒りや不快な思いを象徴しており、それを物理的に破棄することで、その感情からの解放を感じることができるのです。
また、研究では、この行為が心理的な「終結」をもたらし、人々が感情的な負荷を軽減する手段として機能する可能性があることが示唆されています。
つまり、紙を捨てることで、不快な感情や思い出が「終わった」と認識され、心の中でそれらを手放すことができるというわけです。
このような効果は、「象徴的行為」の心理学的な影響に基づいており、単に紙を捨てるだけでなく、その紙が持つ「意味」を捨てることが、怒りの感情を軽減するために重要なのです。
このプロセスは、感情の処理と心理的な回復を助け、より健康的な感情の管理に寄与すると考えられています。
もし私たちがこの方法を日常生活に取り入れることができれば、怒りをより健康的に、かつ効果的に管理する手段を持つことになりますね。
あるいは「またシュレッダーに入れてる…」と恐れられるかも、ですが。
今度、怒りを感じた際には、この研究を思い出して、紙に感情を吐き出してみてはいかがでしょうか。
それが、感情の平穏を取り戻すための助けになるかも知れません。
元論文:
Kanaya Y, Kawai N. Anger is eliminated with the disposal of a paper written because of provocation. Sci Rep. 2024;14(1):7490. Published 2024 Apr 9. doi:10.1038/s41598-024-57916-z
