人はなぜ陰謀論を信じるのか?
陰謀論と言えば、最近ではもっぱらSNSを通じて拡散されていくという印象ですが、私の中では、陰謀論の総本山といえば「月刊『ムー』」が真っ先に頭に浮かびます。
5代目編集長・三上丈晴氏の著書『オカルト編集王 月刊「ムー」編集長のあやしい仕事術』(学研プラス)の中で、40年以上にわたって陰謀論を扱ってきた経験から、三上氏は、陰謀論は決して新しいものではなく、古代から人々の間に存在してきたものであると指摘しています。
そして、現代の陰謀論が広まるのは、人々が「ムー」のようなオカルト雑誌から陰謀論を学ぶ機会が少なくなったことが一因であると分析しています。
的を射ているなと思ったのは、陰謀論を信じてしまう人の心理についての、三上氏の考察です。
* 現実世界が複雑で理解しにくいため、単純な陰謀論にすがってしまう
* 権威や既存の価値観に疑問を持つため、異端的な考えに惹かれてしまう
三上氏は、陰謀論を信じてしまうことが必ずしも悪いことではないと考えています。
しかし、陰謀論を鵜呑みにせず、批判的に検証することが大切であると強調しています。
今回、紹介する論文は、「陰謀論的思考:動機と人格特性のメタ分析的検討」と題され、陰謀論的思考に関わる動機と人格特性の相関に焦点を当てているものです。
元論文:
Bowes SM, Costello TH, Tasimi A. The conspiratorial mind: A meta-analytic review of motivational and personological correlates. Psychol Bull. 2023 Jun 26. doi: 10.1037/bul0000392. Epub ahead of print. PMID: 37358543.
170の研究を包括し、多様な変数と15万人以上の参加者のデータを分析しました。
研究によれば、この陰謀論的思考は私たちの心の中に潜む奥深い動機や特性と関連しているようです。
まず、陰謀論を信じる人々は、しばしば不確実性や脅威に対する強い感受性を持っています。
これは、安定性や秩序の欠如を感じた時、不確かな環境に対処しようとする心の動きなのかも知れません。
研究は、彼らが特殊な出来事に対する通常の説明を拒否し、代わりにより複雑で隠された力が働いていると感じる傾向があることを示しています。
また、陰謀論者はしばしば自己中心的で、他者に対して敵対的な態度を取ります。
彼らは自分たちを「真実を知る選ばれた少数派」と見なし、一般大衆を欺瞞に満ちた世界で迷っていると見なす傾向があります。
このような優越感は、彼らの信念を強化し、同時に社会的な孤立を招いていきます。
しかし、陰謀論的思考は単一の心理的特性に還元されるわけではありません。
実際、陰謀論の種類によってその背景にある心理は異なる可能性があります。
これは、陰謀論が単なる無知や愚かさの産物ではなく、複雑な心理的プロセスの結果であることを示しています。
最終的に、陰謀論を理解することは、単にその信念の内容を分析すること以上の意味を持ちます。
それは、私たち自身の心理的脆弱性や社会的相互作用に光を当てることでもあるようです。
陰謀論に傾倒する心理を理解することで、私たちはより包括的なコミュニケーションと理解の道を開くことができるかも知れません。