今日は、私の好きな禅語を紹介します。
「八風吹けども動ぜず 天辺の月」
八風とは、人の心を揺さぶる、次の八つのことを言います。
1)利:目先の利益
2)誉:名誉をうける
3)称:称賛される
4)楽:様々な楽しみ
5)衰:肉体的な衰え、金銭・物の損失
6)毀:不名誉をうける
7)譏:中傷される
8)苦:様々な苦しみ
ヒトとして生きている限り、人生にはさまざまな風が吹きます。それらの風を無視して生きよということではありません。
「天辺(てっぺん)の月」のように、どんな風にも動じない、不動の心を持つことが大切だと教えています。
興味深いのは、「八風」には、ヒトにとって都合の良いものと悪いものの両方があることです。
1)から4)は都合が良く、順境に相当するものとして「四順」と呼びます。
対称的に5)から6)の都合の悪いものは自分たちの意思に違(たが)うものとして「四違」(しい)と呼びます。
風が吹くのは当然です。しかし、どんな風が吹いていても天にある月は、いつもと変わらぬままです。
この禅語の粋なところは、自ら発光する天体ではなく、太陽の光を受けて輝く月を例えにあげているところだと思います。
個人的な意見ですが、月は他に尽くし、ひそやかに静かに陰徳を積む印象があります。
利他的であるからこそ、不動に心を整えることができる。そう教えられている気がするのです。
