運動は、時間をはかるか、歩数を数えるか

 

外来の診察室で、患者さんとのやり取りで「どのくらい運動したらいいのか」というお話になった時に、「週に何分運動してください」という言い方で答えることが多いです。

ところが、歩数計を利用している方から「1日に何歩歩けばいいのでしょう」と訊かれた時には、うまく答えられないことが多いのです。

それはきちんとしたデータを示してくれるガイドラインがないのが理由です。

このような背景から、最近発表された研究は、60歳以上の女性に対して、時間ベースの運動量と歩数のどちらが健康維持に効果的かを調査しました。

この研究は、1992年から2004年にかけて実施されたWomen’s Health Studyの参加者14,399人を対象にしています。

彼女たちは心血管疾患やがんがなく、2011年から2015年にかけて加速度計を用いて身体活動を測定しました。その後、2022年まで追跡調査が行われました。

研究の目的は、週に150分の中程度から強度の身体活動(MVPA)時間と歩数が全死亡率および心血管疾患(CVD)にどのように関連しているかを明らかにすることです。

解析方法として、コックス比例ハザードモデルや制限平均生存時間差、受信者動作特性曲線(AUC)が用いられました。

結果として、平均年齢71.8歳の女性14,399人のデータが分析されました。

彼女たちの週のMVPA時間の中央値は62分、1日の歩数の中央値は5,183歩でした。

追跡期間の中央値は9.0年で、この期間中、全死亡率の標準偏差(SD)あたりのハザード比(HR)は、MVPA時間で0.82、歩数で0.74でした。

また、上位3四分位群の女性たちは、下位四分位群の女性たちに比べて、生存期間が約2.2から2.4ヶ月長いことがわかりました。

この結果は、MVPA時間と歩数が全死亡率および心血管疾患に対する予防効果において質的に似ていることを示しています。

つまり、どちらの指標も健康維持に有効であり、今後のガイドラインには、個人の好みに応じて、時間ベースの運動目標と歩数ベースの運動目標の両方を取り入れることが推奨されるでしょう。

これにより、より多くの人が自分に合った方法で運動を継続できるようになります。

具体的な目安として、週に150分の中程度から強度の身体活動は、1日あたり約2,100歩から5,183歩の範囲を目安にすることができるかもしれません。

この範囲は、中程度から強度の身体活動を含む歩数として適切と言えます。

昔に比べて、現代は様々なデータが集められ、蓄積されて、解析されていく時代です。

今後は、「週に何分運動してください」というアドバイスに加えて、「1日に何歩歩けばいいのか」という具体的な目安も示せるようになると思います。

 

元論文:

Hamaya R, Shiroma EJ Jr, Moore CC, Buring JE, Evenson KR, Lee IM. Time- vs Step-Based Physical Activity Metrics for Health. JAMA Intern Med. Published online May 20, 2024. doi:10.1001/jamainternmed.2024.0892