医師のバーンアウトの調査研究

 

最近、アメリカの医師のバーンアウト率の調査報告がありました。

 

元論文はこちら→

Ortega MV, Hidrue MK, Lehrhoff SR, et al. Patterns in Physician Burnout in a Stable-Linked Cohort. JAMA Netw Open. 2023;6(10):e2336745. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.36745

 

この研究では、大規模な多専門医療団体で、5年間にわたって医師のバーンアウトの有病率を調査しました。

対象はマサチューセッツ一般医師組織の医師教員で、オンライン調査が2017年、2019年、2021年に行われました。

調査には4つの領域が含まれていて、バーンアウトの定義を3つのサブスケール―疲労、皮肉、個人的な効力感の低下―のうち2つで高いスコアを得た場合としています。

研究対象となった1373人の医師のうち、約72%がこの調査に参加しました。

この研究によると、医師のバーンアウト率は年度によって変動しています。

具体的な数字について見てみると、2017年には44.4%(610人)、2019年には41.9%(575人)、そして2021年には50.4%(692人)と報告されています。

このデータが示しているのは、バーンアウト率が一度は下がったものの、2021年に再び上昇している点です。

変動はともかく、バーンアウト率が4割から5割というのは、想像はしていたものの、それ以上に高いものでした。

その原因として考えられるのが、COVID-19の影響です。

このパンデミックは医療業界に多大なプレッシャーをかけ、それが医師のバーンアウト率に反映されている可能性が高いとされています。

COVID-19は医療体制に大きな負担をかけました。

感染者数の増加による病床の不足、医療従事者自身の感染リスク、そして不確実な治療法など、多くのストレス要因が医師に影響を与えています。

これらは、既に高かったバーンアウト率をさらに上昇させる要因となっているでしょう。

また、この研究においても指摘されているように、バーンアウトの原因は多様です。

高いワークロード、自律性の喪失、ワークライフバランスの崩れなどが、医師を疲弊させる大きな要素となっています。

COVID-19が加わることで、これらの問題は一層深刻化している可能性があります。

そして、バーンアウトが進むと、医療ミスの増加や患者満足度の低下、さらには医師不足の問題にもつながります。

当然ながら、医師の心の健康は、医療全体の質にも影響を与えるのです。

一方で、医療界ではAIやロボット技術の導入が進んでいます。

これにより、診断や手術の精度は向上していますが、医師の心の負担に対する解決策とはなっていません。

患者とのコミュニケーションや心のケアに関しては、テクノロジーが補完できる範囲は限られています。

このような複雑な状況を考慮すると、医師自身が心の健康を維持する方法を模索する必要があります。

そして、それが新たな研究やデータ、政策変更を促す原動力となるでしょう。

 

研究は「スナップショット」であり、現状を把握する一つの手段です。

次に必要なのは、この問題にどう対処するかという「行動」だと言えます。