良い行いをするように人びとを動機づける方法:TEDから

 

MITのスローン経営大学院の研究員であるエレス・ヨエリ氏のTEDでの講演です。

投票に出向く、寄付をする、資源を節約するなど、人びとに良い行いをさせるためにはどうしたら良いのか?についてのお話でした。

彼が電力会社と協力して取り組んだプロジェクトでの、ある失敗がありました。そのプロジェクトは、エネルギー消費ピーク時に節電することで停電を防ぐというものでした。しかし、電話ホットラインを設けて参加者を募集しましたが、電話はほとんどかかってきませんでした。

なぜなら、参加者が「良いこと」をしていることが公表されないシステムだったからです。

そこでヨエリ氏らは、記名簿を郵便受け近くに貼ってみました。すると、参加者数が3倍に増えたのです。

つまり、人々は他人の評価を気にかけ、他人に認識されることで善行を行う意欲が高まるというわけです。

けれども、ただ他人に見えるようにするだけでは、全ての問題が解決するわけではありません。

あるとき、ヨエリ氏は結核患者を支援するためのモバイルヘルススタートアップ、Kahilaと協力する機会がありました。結核の治療は困難で、患者は6ヵ月以上もの間、強力な抗生物質を服用しなければなりません。その抗生物質は副作用として頭痛や吐き気を引き起こし、さらには尿の色まで変えてしまうことさえあります。

これらの困難を乗り越えるために、ヨエリ氏たちは患者に毎日テキストメッセージを送り、薬を飲んだことを確認するシステムを設けました。さらに、患者が確認をしなかった場合には、再度メッセージを送るなどして、その「言い訳」を排除しました。

「観察可能性の増加」、「言い訳の排除」、そして「期待の伝達」。これらの三つのアプローチを用いることで、ヨエリ氏は、人々が善行を行うモチベーションを引き出す方法を提案しています。

そして、これらのツールは、追加の資金を調達したり、新たな高度な技術を開発したりする必要はありません。ただ、人々の評価を重視し、言い訳を許さず、善行の期待を伝えるだけで、社会的な変化をもたらすことができるのです。