ドストエフスキー「死の家の記録」

 

 

「死の家の記録」はドストエフスキーの長編小説です。(最近の私の読書の傾向は「古典」に偏っているようです。)

主人公のゴリャンチキノフが流刑された監獄での10年間の生活を回想する形で語られます。

ドストエフスキー自身がオムスク監獄で過ごした自分の体験をもとに書いた作品ですが、完全な自伝ではなく、架空の要素を加えたり、実際には起こらなかった出来事を挿入したりしています。

それでも、当時のロシアの監獄制度や流刑制度の実態が生々しく描き出されていて、人間の尊厳や自由、罪や罰などのテーマが含まれています。

主人公のゴリャンチキノフは、最初は囚人たちと馴染めず、彼らの暴力や汚さに嫌悪感を抱きます。

しかし、次第に彼らの個性や運命に興味を持ち始め、囚人たちとの交流を通して彼らの中にも善や美や希望が存在することを発見し、自分自身の罪や苦しみを見つめ直すのでした。

作品は、囚人たちの日常や仕事、祭りや喧嘩、脱走や処刑などのエピソードで構成されています。

この小説には有名な名言がいくつもありますが、少し並べてみます。

金は鋳造された自由である。だから完全に自由を奪われた人間にとっては、それは普通の十倍も尊いものである。ポケットの中で銭がちゃりちゃり音を立てていさえすれば、仮に使い道がなかろうと、囚人はすでに半ば心を癒される。」

「しかし、私は彼らに同情することができなかった。私は彼らを憎んだ。私は彼らを人間として見ることができなかった。私は彼らを野獣として見た。しかし、私は間違っていた。彼らは人間だった。人間は、自分がどれほど低く落ちても、それを自覚することができる。そして、その自覚こそが人間を救うのだ。

「彼らは自分の運命に対して不平を言った。彼らは自分の運命に対して反抗した。彼らは自分の運命に対して悲嘆した。しかし、それは何も変えなかった。人間は、自分の運命に対して不平を言うことができる。しかし、それを変えることはできないのだ。彼らはそのことを知っていた。」

この作品は、ドストエフスキーの後期作品における人間性や罪や赦しに関するテーマの原点として知られています。