「いくつになっても脳は鍛えられる」

 

 

この類の書物には、必ず「医療的診断や治療に利用できる情報は何も含まれていない」という注意書きが添えられているものです。

教育的な情報を提供するという目的で書かれていますし、私たち読者もそのような心構えで読まなければなりません。

とはいえ、表紙にもある「いくつになっても脳は鍛えられる」という言葉には、老いていく人間にとっては、わかっていてもつい小さな希望を抱いてしまうのです。

この話題の核心にあるのが「神経可塑性」という概念です。

古くは、ヒトの脳はある年齢に達すると、その先は退化するばかりだとされてきました。

ところが、ニューロンを新たに作り出す「ニューロン新生」とニューロン間に新しい結合を作る「シナプス新生」によって、ニューロン間の結合を組み替えていく「神経可塑性」が生涯にわたって続くことがわかってきました。

つまり、「年をとると神経可塑性の効率は悪くなるが、それでもなくなることはない。」

ジェームズ・ズール博士は「ニューロンは、繰り返し使われるときはいつも新しいつながりを増やしていくので、学びに限界はない」とも述べています。

「歳とったから学ばなくていい」はあり得ないということです。

巻末に、例えば「脳と栄養素に関する11項」のように脳の機能に関する興味深い情報のまとめが付記されていました。

 

①脳は、酸素とグルコースを使用し、それらは動脈血から取り出されます。

②血液脳関門は、脳内に入る物質を制限しますが、酸素とグルコースは自由に拡散できます。 

③オメガ3脂肪酸の摂取は、認知力の低下リスクを減らします。 

④野菜の多食は認知力の低下や認知症リスクを減少させます。 

⑤喫煙は、認知力の低下リスクや認知症リスクを増加させます。 

⑥適度なカフェイン摂取は注意力を高めますが、生涯にわたった効果は不明です。 

⑦軽度から中程度の飲酒は、認知症リスクを減らします。 

⑧糖尿病は、認知力の低下リスクや認知症リスクを増加させます。 

⑨肥満と認知力の低下には関連があるが、その本質は不明です。 

⑩ビタミンB6、B12、E、C、ベータカロテンのサプリメントは、認知力の強化や認知症リスクに影響を与えません。 

⑪イチョウ葉は、認知症リスクを低下させず、脳機能を強化しません。

 

これから先、脳の研究が進んでいくと、「正しい脳の鍛え方」というのがわかってくるのでしょうね。