妖怪と言えば、水木しげる先生を真っ先に思い浮かべてしまうほど、先生が描いたデザインが妖怪のイメージを定着させてしまっています。
一反木綿やぬりかべ、子泣き爺、砂かけ婆などは、まさしくそうですね。
ディズニーのキャラクターが世界的に広まってしまったために、子ども達が「シンデレラ」や「ピノキオ」の原作の挿絵を見て「これシンデレラじゃない!」と残念がるような現象が起きてしまっているのと同じです。
宮崎駿監督が「まっくろくろすけ」を登場させるとき、敢えて水木色を排したというのを、どこかで聞いたことがあります。
幸いに、沖縄のキジムナーは水木作品の中で主要キャラクターでないだけに、沖縄の子ども達の反応は「キジムナーってこんなんじゃないよね」と冷めています。
どちらかというと、「へこき三良(へこきさんら)」か、ウルトラマンに出てきた「ピグモン」のイメージが定着している気がします。土着のイメージというやつでしょうか。
ところで、「妖怪学」というと、妖怪の民俗学や社会学、口承文学、宗教にいたるような人間文化の学問なのかと思っていました。
ところが!
この本は明治中期から大正にかけて、日本に「妖怪学」という学問を提唱した最初の書籍なのですが、その目的は「妖怪現象や妖怪を信じる人々に対して、科学的根拠を提示して、それを否定していく」というものです。
つまり、当時の「妖怪学者」とは「妖怪退治をする人」「妖怪ハンター」ということですね。
この世に妖怪がいなくなることが目的ですから、それはつまり妖怪や迷信を信じる者を撲滅するということです。文明開化真っ只中の明治の機運が伝わってくる気がします。
ちなみに、民俗学としての妖怪学が出てくるのは、ずっと後になります。