詩「ある ある ある」

 

中村久子さんは、3歳の頃に凍傷が元に突発性脱疽となり、両手足の肘から先と膝から下を失うというハンディを抱えながら、懸命に生きた女性です。

すさまじい精神力と努力で料理や裁縫も何でも一人でこなし、来日したヘレン・ケラーが「私より不幸な人、私より偉大な人」と賞賛したのだそうです。

その中村久子さんの詩です。

 

ある ある ある
さわやかな 秋の朝
「タオル取ってちょうだい」
「おーい」と答える 良人がある
「ハーイ」という 娘がおる
歯をみがく 義歯の取り外し かおを洗う
短いけれど 指のない まるい つよい手が 何でもしてくれる
断端に骨のない やわらかい腕もある
何でもしてくれる 短い手もある
ある ある ある
みんなある
さわやかな 秋の朝

 

この詩は「ない」ものではなく、「ある」ものに目を向けています。

私たちが学ぶべきことはとても多いです。