この本はヴィトゲンシュタインの言葉を切り取って紹介してくれています。
ヴィトゲンシュタインの哲学をひとつまみの言葉で理解しようとするのは大間違いであることはわかっているのですが、理解ではなく、我々凡人にとって哲学者の言葉はお札(おふだ)のようなものです。
共感できる言葉に勇気をもらい「自分は間違っていない」というお守りです。あるいは自分にはない視点から世界を広げてもらう神符です。
(一度頑張って「論理哲学論考」を読んでみましたが、私には難解すぎたようです。)
さて、この本にこんな一節がありました。
「これをやったらこういう結果になる、という因果の法則なんてものは存在しない。 わたしたちが原因と呼んでいるものは、すべて勝手に決めた仮説だからだ。一つの原因が必ず特定の結果を生むことはない。 あることを行ない、それがどういう事態を生むかは前もって知ることなどできはしない。何でも起こりえる。また、何も起きないこともある。 だから、行動することに怖じ気づくな。心配するな。果敢に行なえ。行なわないで悔やむよりはずっとましだ。」
「ヴィトゲンシュタインの講義Ⅰ」からの引用とありますから、「論考」に比べてくだけているのはそのためですね。
この言葉のメッセージはいたってシンプルです。
「因果の法則なんてありえない」
ずっと仏教に親しむ私には、なんとも衝撃的な言葉です。けれども、なぜか、少し立ち止まって吟味したくなる魅力的な言葉ではあります。
ヴィトゲンシュタインは、原因はすべて仮説であると断じています。
仮説である以上、行き着く先は誰もわからない。
まるでW杯サッカー日本代表のことを言っているようですね(笑)
スペイン・ドイツと同組となり、グループ突破は絶望的だと言われていた姿と重なります。
「因果の法則」を持ち出して何も行動しないのは、愚の骨頂です。
挑戦者に「因果の法則」はありえないのかも知れません。