「言われた通りにする」発言

 

ビートルズファンにとって、1月と言えば、長い間トラウマの月でした。

1969年1月2日。殺風景で薄暗いトゥイッケナム・スタジオの中。そこに靴の音がコツコツと近づいてきます。ビートルズのロードマネージャーであるマルが登場するオープニング・シーン。彼が持っているのは、お馴染みの「THE BEATLES」のロゴ入りのバスドラム。カメラはその文字をアップ。そしてジョンの「Don’t Let Me Down !」という歌声。

映画「LET IT BE」の印象は、この陰鬱なシーンに集約されています。この映画の尺は約90分。彼らを語るにはあまりにも短い映画でした。

同じ題材でありながら、2021年11月公開の映画『ザ・ビートルズ:Get Back』は明るくエキサイティングで、「LET IT BE」のネガティブな印象を払拭するものでした。

そうは言っても『ザ・ビートルズ:Get Back』のオープニング・シーンは実は「LET IT BE」とほとんど同じです。

第1日目~第7日目までを取り上げた Part 1は、観る者に「LET IT BE」の不協和音を想起させるものでした。

そして、1969年の今日。1月6日は、ジョージとポールが口論する、あの有名なシーンがあった日です。映画「LET IT BE」でも使用された、ジョージのポールに対する「言われた通りにする」発言です。

ここで、改めて二人の会話を取り上げてみますね。(もちろん「Get Back」からです)

 

 

ポール:わかった、聞いて。ぼくが言いたいのはそういうことじゃないんだ。なのにまた、そう言ってるような流れにしようとしてる。それにこないだも話しただろ…ぼくはきみをやっつけたいんじゃない。ただ、「なあ、みんな、ぼくら、バンドで、ほら…こんなふうにやってみないか?」と言いたいだけなんだ。

ジョージ:不思議なのはこうなるのがいつも、ぼくらが…えっと…。

ポール:わかってる。これだろ。「ヘイ・ジュードは全編にギターを入れるべきだろうか?」「いや、その必要はないと思う」

ジョージ:ああ、わかった。もういいよ。ぼくはそっちのお望みどおりにプレイするし、もし弾いてほしくないと言うんならなにも弾かない。とにかく、なんでもそっちのお好みどおりにする。ただしさっきのは、そっちにもちゃんとわかってるとは思えない。

ポール:うん、まだそんな感じじゃない…今はまだりハーサルだし、TVの番組用にまとめようとしてるところだから、正直…きみが言ったように、通しでやったのはまだ4曲だけだし。

ジョージ:うーん、じゃあ…。

ポール:だったらどの曲も2、30回やって、全部覚えこむようにした方がいいのかもしれない。

 

 

前後の会話やそこに至る経緯がわかると、あまり衝撃的ではありませんでした。

言葉というものは切り取り方で、全く印象が変わってくるものです。(これはネットニュースなどで経験することです。)

それはともかく、1969年の1月にGet Backセッションが行われていたと思うと感慨深いものがあります。

伝説のルーフトップ・コンサートは1月30日。

この1ヶ月間は1969年当時を思い浮かべながら、伝説を振り返る楽しみがあります。