「自分が見ると負ける」?

 

「自分が見ると負けるんだよなあ」

今日、患者さんとスタッフとの会話がふと耳に入ってしまいました。何を話題にしているのかはすぐにわかることです。

この患者さんと同じ思いを持った人が、今日は日本中にたくさんいるかも知れません。

昔、私の母も高校野球のテレビ放送があると「私が見ると点をとられる」と言ってテレビの前から逃げ出したものでした。ただ単に臆病だっただけかも知れませんが。

「自分が見ると負ける」と言うのは、言葉には出さなくても(信じていなくても)誰もが一度は身に覚えがあることかも知れません。

ちょうど「雨男」を自称するのと同じことなのでしょう。

これは偉そうに言うと「前後即因果の誤謬(あやまり)」と言うやつです。

人は前後関係にある2つのことがらを因果関係で結びつけたがる習性を持っています。

因果関係に落とし込んでしまうと、心の中で秩序が生まれて「わかった」つもりになるのです。

しかも、この場合の「わかった」は知性の問題ではなく、感情の問題です。

試合に勝った負けたは、観戦者にとって事実よりも感情の問題ですから、さらに結びつきやすいのでしょう。

「だから、今度のスペイン戦は見ないつもりなんだよ。」

そう言う患者さんに、スタッフは極めて冷静に「だって試合開始は午前4時からだから、見れないはずよ。」と答えていました。

これで勝ったりしたら、ますます「自分が見たら負ける」問題は威力を増すわけですね(笑)。