ゲーテはこんな言葉をのこしています。
「前進をしない人は、後退をしているのだ」
名言リストに載るような言葉ですから、ありがたくいただきつつも「前進しなかったら、現状維持で、後退はしないでしょう」と思っていたのですが、この年齢になると最近はよくわかる気がします。
例えば、高齢の患者さんのことを思い浮かべてください。
風邪をひいて1週間調子が悪くて寝込んだとします。風邪は良くなったけれど、足腰の筋力が衰えてふらつくようになったというのはよく耳にする話です。
ゲーテの言葉には「時間の流れ」を要素に入れなければなりません。
時間はものすごい勢いで流れています。エントロピー増大の法則を持ち出すまでもなく、そのまま自然に任せておくと、一方向のみに進み、自発的に元に戻ることはありません。
ちょうど逆方向に進む「動く歩道」のうえを歩いているかのようです。立ち止まると、後ろに下がっていくのです。
突然ですが、こんな問題を考えてみてください。
「あなたは首里城に仕える役人です。100Km離れた村に大事な知らせを届けなければならない。人員はあなた一人。馬もなければ伝書バトなどもありません。どうして届けたらよいでしょう。」
答えはシンプル。「100Kmを自分の足で一歩ずつ進む」です。手っ取り早い方法などありません。一歩一歩を続けていくしかありません。
ゲーテの言葉の「前進」に、私たちはその「手っ取り早さ感」や「成果・効率」の誇大イメージを抱きがちです。
けれども、「前進」の本質はベイビーステップなんだと思います。0.1%、あるいは0.01%の成長です。
少しずつ少しずつ刻むつもりで。続ければいつの間にか進んでいるものです。
