SF古典「海底二万里」

 

 

本作のほかに「十五少年漂流記」や「八十日間世界一周」「地底旅行」などで有名なフランスの作家、ジュール・ヴェルヌは、H・G・ウェルズとともに、「SFの開祖」「SFの父」、さらには「SFの巨人」とも呼ばれています。

彼の言葉「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」は、科学技術の進歩を予言し、未来へ人々の期待を乗せた名言として広く知られています。

その彼の代表作である「海底二万里」は、1870年の作品。

日本で言えば、大政奉還が1867年のことですから、明治の世になって西洋化の波が押し寄せてきた時代です。ちなみに福澤諭吉『学問のすゝめ』が1872年の発表でした。

その時代に、ヴェルヌは本作で当時まだ実用化していない潜水艦を活躍させ、実現していない未踏の世界一周航海を扱い、南極大陸の発見やアクアラングの発明を予言しています。

そういう雑学ネタがちらかっているために、私もなんとなく知っている気になっていました。

現に「ノーチラス号」「ネモ艦長」などのキーワードは耳慣れたものでしたし、原作に忠実な翻訳ものではなくても子ども向けに書き直された作品を小学生の頃にでも読んだつもりになっていたのです。

「ラストってどうだったっけ?」

そう思ったら、実は読んでいないことに気づいてしまいました。私にとってはもちろん「読まずに死ねるか」リストに入っている古典中の古典ですから、急いで読みました。

冒険活劇ばかりでなく、博物誌的な要素を折り込み、科学的事実を描写することで真実味を帯びさせる手法は、「SFの開祖」と呼ぶのにふさわしいのだと思います。

登場人物は、本作の語り手である海洋生物学者ピエール・アロナックス教授。アロナックスの助手であるコンセイユ。そして、腕利きの銛使いのカナダ人ネッド・ランド。そして、3人を捕虜として収容するノーチラス号のネモ艦長。

ネモ艦長は作品を通してどこまでもミステリアスな存在として描かれています。彼はダークヒーローの走りなんでしょうね。

それで、物語のラストはというと、正直びっくりしました。ネタバレは避けますが、ヴェルヌにとって、ラストは大した問題じゃなかったようです。