「遠くに目をやろう」

 

 

「アランの幸福論」の中には、暮らしと密接に結びついた「生活知」がつまっています。

アランが人間の身体性をとても大事にしていたのでもわかります。心と体の結びつきについて多くを語り、心身が硬直してしまうのを「不幸」とみなしていました。

ですから、心をときほぐす身体的な運動が有効だと考えていました。

「心の領域の病気にも、また肉体の病気の初期症状にも同じく、リラックスさせることと体操が必要なのだ」

アランは、筋肉が「笑い」「微笑み」によってほぐされると、心も同様に静めることができ、自分の思うように動かすことができるのだと指摘しています。

「アランの幸福論」には、読むたびに新たな発見があるのですが、今日も興味深い箇所を見つけました。

 

「ふさぎ込んでいる人に言いたいことはひとつ。『遠くに目をやろう』

こういう人はだいたいきまって本の読みすぎである。人間の目はそんな近くに焦点を合わせるようにはできていない。だから宙を見つめると安らぐのである。

星空をながめるとき、あるいは果てしない海をながめるとき、目の緊張が完全にほぐれる。目がほぐれると心が解き放たれ、足どりも自信にあふれる。自分の内部のすべて(臓器までも!)がほぐれ、しなやかになる。」

 

気分のふさぎ込みが「本の読みすぎ」であるかどうかはともかくとして、今風に言い換えるならば「スマホの見過ぎ」「SNSに翻弄されすぎ」だろうとは思います。

そして、アランの「遠くに目をやろう」という提案には、激しく同意します。

「空を見ろ♪ 星を見ろ♪ 宇宙を見ろ♪」(ウルトラマンタロウより)

身体を伸ばし、遠くを眺めて、心のリラックスをしていきましょう。それが、アランの「生活知」というものです。