SF「幼年期の終り」

 

 

アーサー・C・クラークが1952年に発表した長編小説で、古典SFの中でも特に名作と名高い作品です。70年前にこういった構想がなされたということ自体、驚きを隠せません。

私が思う良いSF小説は常に哲学的です。

哲学者の永井均氏は、「哲学とは、森羅万象を『こうでない可能性』のもとに見るものの見方のこと」と言い、そしてそれはもちろんSFも同様です。

SFの定義は難しいですが、「こうでない可能性」のもとに作者が描く世界を、読者は哲学的思索のもとに自分の中に落とし込んでいくものです。

「私」がこの世界の住人であったとしたら?という想像は、私たちの価値観を揺さぶってくれるものです。

この「幼年期の終り」については、「人類の進化」「異星人との交流」「星間旅行」「ユートピア」などのテーマが扱われ、その後に続く作品だけでなく、あらゆる分野にも多大な影響を与え続けています。(例えば、シンウルトラマンのメフィラス星人は作中の「オーバーロード」そのものです)

「星々は人類のものではない」

作家の想像力が、当時の古い価値観と衝突しているような言葉です。かつて三島由紀夫が「私は心中、近代ヒューマニズムを完全に克服する最初の文学はSFではないか、とさえ思っている」と語ったように、人類と言う視点で物語を語る醍醐味がここにあります。

古典SFに興味があれば、ぜひおすすめしたい作品です。