寓話「うさぎとかめ」

 

「ウサギとカメ」というお話は、イソップ寓話やラ・フォンテーヌが書いたものに収められています。

日本に伝わる「兎と亀」は、西洋のお話が室町時代後期以降に伝わったものとされていますから、「日本の昔話」だと思っている方も多いかも知れませんね。

実際、「まんが日本昔ばなし」にも取り上げられていましたから、日本に土着したお話だと言っても良いかも知れません。

あらためて、あらすじを見てみましょう。

 

むかしむかしあるところに、うさぎとかめがいました。

ある時、森の動物たちはうさぎとかめのどちらが速いかの話題になり、実際に競走をすることになりました。スタートの合図でうさぎが飛び出すと、予想通りうさぎは先へ進み、かめとの距離を広げました。ゴールは山のてっぺんです。

かめがあまりに遅いので、うさぎは一休みのつもりでうとうと眠り始めました。

しばらくして目を覚ましてもかめの姿が見えないので、うさぎはゴールを目指して走り出しました。すると山のてっぺんで先にゴールしていたかめが大喜びしていたのです。

かめは、うさぎが居眠りしている間にも歩みを止めずに着実に進んでいたのでした。

 

ためしに青空文庫で「兎と亀」を探すと、ロオド・ダンセイニ著・菊池寛訳のバージョンを読むことができます。

兎と亀

ところが、結末がちょっと違うのです。亀がレースに勝利したのは同じですが、その後に森に火事がおきます。

 

「森の火事は、大風のある晩に突然起りました。兎だの、亀だの、その他五六匹の動物は、その時ちょうど森のはずれの小高い禿山の上にいたので、すぐ火事を見つけることが出来ました。彼等は、大いそぎで、この火事を森の中の動物に知らせに行くには誰が一番いいだろうかと、相談しました。その結果、ついにこの間の競走で勝った亀が、その役目を引きうけることになったのです。

 もちろん、亀が「しっかり走って」行くうちに、森の中の動物たちは、残らず火事にやかれてしまったのであります。」

 

勝負には勝ったが、そこで自分の実力の自己評価を誤ってはいけないという教訓になっています。

亀が「足が遅い」という事実を認識していれば、(それでウサギに知らせに行く役目をまかせていたならば)森の動物たちは火事にやられずに済んだでしょうから。